日銀利上げで何が変わるのか――変動金利は今秋から上昇へ

日銀は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.25%引き上げ、1%程度とすることを決めました。住宅ローンの変動金利もこれを受けて今秋から引き上げられる見込みで、金利は上昇の一途をたどっています。

注意したいのは、物価が上がる局面(インフレ)では、たとえ借入額(元本)の名目額が変わらなくても、金利の上昇によって毎月の返済負担が膨らむという点です。だからこそ、「家計全体の支出と収入がどう変わるか」を見込んだうえで、借入額を考えることが欠かせません。

[「またか」と感じる方も]
ある30代の会社員の方は、現在は賃貸住まいで、2年程度のうちにマイホームの購入を検討中とのこと。住宅ローンを検討し始めた当初は変動金利が0.4%程度だったのに、今は1%を少し上回る水準に。「それがさらに上がるとは」と、ため息をつくといいます。利上げ局面では、こうした「想定が次々に塗り替わる」感覚はめずらしくありません。

住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営するMFSによると、2026年6月時点で主要行の変動金利の平均は1%以上になりました。今後の利上げが反映されれば、変動金利はさらに上がる可能性があります。たとえば、新規に35年返済で4,000万円程度を借りる場合でも、適用金利が上がれば、毎月返済額は着実に重くなっていきます。

「一段の利上げ」も視野に

金利上昇はこれで終わりとの見方も多く、MFSの塩沢崇取締役は「2027年には政策金利が1.5%まで上昇し、その後に2%程度に近づいていくことがメインシナリオ」と話します。リスクシナリオとしては、2年程度でも2%に達する可能性も指摘されています。つまり、借入時点の金利だけでなく、「この先さらに上がったら」を織り込んで考えることが大切になります。

「借りられる額」と「借りていい額」は違う

家を買うとき、多くの人がまず気にするのは「自分はいくらまで借りられるのか」です。銀行に審査を申し込み、通った金額を上限に物件を探す――これはごく自然な流れです。しかし、ここに大きな落とし穴があります。

借りられる額(上限) 借りていい額(家計が返せる額)
審査に通った金額は、あくまで「上限」。そのまま借りると家計が苦しくなることもあります。

専門家も、この点を強く戒めています。三井住友トラスト・資産のミライ研究所の丸岡氏は、「借りられる額はあくまで上限であり、家計が『借りていい額』とは異なる」と指摘します。審査に通ったからといって、その満額を借りてしまうと、金利上昇や収入の変化で家計が立ち行かなくなりかねません。

大切なのは、返済に回せる金額から逆算して、自分のケースに合わせ、本当に返し続けられる額を検討することです。その水準を測るものさしが、次に説明する「返済比率」です。

目安となる「返済比率」とは――審査は30〜35%以下

住宅ローンをどの程度まで借りていいのか。その水準を考える一つの目安が「返済比率(へんさいひりつ)」です。これは、収入に占める年間返済額の割合のことで、金融機関の審査でも使われている指標です。

返済比率 = 年間返済額 ÷ 収入 × 100
数字が大きいほど、収入に対するローン負担が重い、ということを示します。

たとえば、住宅金融支援機構の全期間固定型ローン「フラット35」では、返済比率の基準を年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下(すべての借り入れを合算)としており、民間の金融機関でもこうした水準の基準が採られています。

[審査は「審査金利」で計算される]
審査の際は、実際の適用金利ではなく、それより高めの「審査金利」を用いて返済比率を計算するのが一般的です。将来の金利上昇に備えた、金融機関側の安全装置といえます。なお、審査では税込年収をベースに計算する例もありますが、自分で試算するなら、手取り(可処分所得)をベースにした方が、実感に近いイメージをつかめます

金利が上がると毎月返済はいくら増えるのか

では、金利が上がると、毎月の返済額は具体的にどれだけ増えるのでしょうか。日本経済新聞が、35年元利均等払いで、借入額と金利の組み合わせごとに毎月返済額を試算した結果が、次の表です(5年ルール・125%ルールは考慮していません)。

借入額\金利 1.00% 1.25% 1.50% 1.75% 2.00%
3,000万円84,68688,22691,85595,57399,379
4,000万円112,914117,635122,474127,431132,505
5,000万円141,143147,043153,092159,289165,631
6,000万円169,371176,452183,711191,147198,758
7,000万円197,600205,860214,329223,004231,884
8,000万円225,829235,269244,948254,862265,010
9,000万円254,057264,678275,566286,720298,136
1億円282,286294,086306,184318,578331,263

(単位:円/月。35年元利均等払いで試算。5年ルール・125%ルールは考慮せず。出所:日本経済新聞)

たとえば5,000万円を借りた場合、金利1%なら毎月約14万1,000円ですが、2%に上昇すると約16万6,000円へと、月2万5,000円ほど負担が増えます。1億円を借りていれば、金利1%の約28万2,000円が2%で約33万1,000円となり、月約4万9,000円、年間にして約59万円もの負担増です。借入額が大きいほど、わずかな金利差が家計に効いてくることがよく分かります。

手取りに占める割合でみる――30%超で強まる負担感

毎月の金額だけでは、それが「重い」のかどうか判断しづらいものです。そこで、手取り(可処分所得)に占める返済額の割合でみてみましょう。次の表は、総務省「家計調査」(2025年、2人以上世帯)が示す、住宅ローン返済中の勤労者世帯の可処分所得を基準に、返済比率を試算したものです。

借入額\金利 1.00% 1.25% 1.50% 1.75% 2.00%
3,000万円14%15%15%15%16%
4,000万円18%19%20%21%21%
5,000万円23%24%25%26%27%
6,000万円27%28%30%31%32%
7,000万円32%33%35%36%38%
8,000万円37%38%40%41%43%
9,000万円41%43%45%46%48%
1億円46%48%50%52%54%

(手取りに占める返済額の割合。総務省「家計調査」2025年・2人以上世帯の可処分所得をもとに試算。5年ルール・125%ルールは考慮せず。出所:日本経済新聞)

現在の変動金利の目安である1%でも、7,000万円を借り入れると返済比率は32%。さらに金利が1.5%まで上がると35%に達します。8,000万円〜1億円でも審査に通る可能性はありますが、借り入れたあとに手取りが減れば、表のような重い返済比率になりかねません。

「30%超」が借りすぎの境界線

一概に「ここまでなら安心」と言える負担率を示すのは難しいものの、丸岡氏は返済者の声からは「30%超」が借りすぎの境界線にみえると指摘します。三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査では、返済比率が30%を上回ると、返済を「負担に感じる」という回答が増える一方で、「返済しながら資産形成に取り組めている」割合は低下し、家計の余裕が乏しくなることが示されています。

「30%以内なら大丈夫」とも限らない

この範囲内に収まればよい、というわけでもありません。夫婦で借りる「ペアローン」では、育児期に収入が減って偏る例もあります。最近は最長50年などの超長期返済で目先の返済比率を抑える動きも目立ちますが、その分、高齢期まで完済できない懸念が残ります。さらに、マンションの管理費・修繕積立金や戸建ての修繕費は資材高・人手不足で上昇傾向。子の教育費を重視するなら、返済と教育費を両立できるかも検討が必要です。塩沢氏は「返済はギリギリ続けられても、自分が大切にしている他の支出を削らざるを得なくなれば、生活満足度は下がってしまう」と話します。

変動金利の「5年ルール・125%ルール」という落とし穴

変動金利型の住宅ローンには、急な返済額の増加をやわらげる、独特のしくみがあります。それが「5年ルール」と「125%ルール」です。多くの金融機関が、元利均等返済の場合にこれらを採用しています。

ルール内容
5年ルール 金利が変動しても、毎月の返済額は5年間は変わらないというしくみ。金利上昇分は、返済額の内訳(元本と利息の割合)の調整で吸収される。
125%ルール 5年ごとの見直しで返済額が増える場合でも、それまでの返済額の125%(1.25倍)が上限。急激な負担増を防ぐしくみ。
[負担を「先送り」しているだけのことも]
これらのルールがあれば、急な利上げにも対策を練るための一定の余裕が生まれます。しかし、注意したいのは、返済額が抑えられても、利息そのものが減るわけではないという点です。抑えた分は先送りされ、その代わり総返済額(総利息)はむしろ増えるのが普通です。場合によっては、毎月の返済額だけでは利息を払いきれない「未払い利息」が生じることもあります。ルールに守られているからと安心せず、家計全体のバランスを考える作業も進めておきたいところです。

なお、本記事の試算表(第4章・第5章)は、これらのルールを考慮していません。実際の返済額はルールによって緩和される場合がありますが、「いずれ負担はやってくる」ことを前提に、上昇後の金額で家計を点検しておくことが安全策になります。

繰り上げ返済は手元資金と資産形成のバランスで

金利上昇局面では、「少しでも繰り上げ返済して、借金を減らしたい」と考える方も増えます。ただ、ニッセイ基礎研究所の塩崎潤一氏は、「繰り上げ返済をする場合、手元の緊急資金や将来への備えとのバランスを考えたい」と話します。

住宅ローン 繰り上げ返済 手元資金の確保 ● 生活費の半年〜1年分の備え ● 急な出費・収入減への対応 ● インフレ下では一層重要 資産形成の推進 ● 教育費・老後資金の準備 ● 利息軽減と運用成果の比較 ● いずれも「余裕資金」で検討 繰り上げ返済は、家計全体のバランスを取ったうえで
繰り上げ返済は「手元資金の確保」と「資産形成」のバランスを考えて実施する

一般的に、生活費の半年から1年分程度は緊急資金として確保しておくのが望ましいとされます。とくにインフレ下では、日常的な支出が増える分、この手元の流動性の確保がより重要になります。余裕がある資金を、単純に繰り上げ返済へ回してよいかどうかを見極めたいところです。

また、繰り上げ返済は、その資金を使って金利分を運用するのとほぼ同じ効果がある、とも考えられます。変動型金利が現在1%程度であることをふまえれば、一定のリスクを負えるなら、繰り上げ返済よりも有利な運用で備えるという選択肢もあります。教育費・老後資金など長期の資金準備とあわせ、繰り上げ返済を考える場合も、家計全体のバランスを取れる対応が欠かせません。

「借りていい額」を考える3つのポイント

最後に、自分にとっての「借りていい額」を見定めるために、事前に点検しておきたい3つのポイントを整理いたします。

POINT 1 返済以外の支出
POINT 2 年収の増減
POINT 3 借入額の削減余地
  1. 返済以外の支出を払い・貯められるか 教育費、老後資金、住宅の維持費(管理費・修繕費)など、ローン返済以外に必要なお金を支払い、貯蓄もできるか。返済だけで精一杯では、家計はもちません。
  2. 年収の増減を見込めているか 育児期の減収、転職の可能性、定年後の収入減など、将来にわたって収入がどう変わりうるかを織り込む。今の年収だけで判断しない。
  3. 借入額を減らす余地はないか 物件価格を抑えられないか、より多くの頭金を入れて借入額を減らせないか。立地などで安易に物件価格を下げるのは考えものですが、頭金で借入額を抑える余地は事前に検討したいところです。

これらは、金利が1%でも2%でも変わらない、家計設計の土台となる視点です。「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら無理なく返せるか」――この順番で考えることが、利上げ時代の住宅ローンとの賢いつき合い方といえます。

よくある相談事例
※以下の事例は架空のものであり、実在の個人・団体とは関係ありません。

「審査に通った満額で家を買おうとして、踏みとどまったケース」

共働きのVさんご夫婦(ともに30代)からのご相談でございました。希望のエリアに理想の物件を見つけ、銀行の審査では7,000万円まで借入可能との回答。「せっかくなら、と満額で買おうか迷っている」とおっしゃいます。当センターで提携のファイナンシャルプランナーと家計を点検したところ、手取りに占める返済比率は、現在の金利1%でも約32%。さらにメインシナリオどおり金利が1.5%まで上がれば35%に達する計算でした。

そこへ、お二人が「いずれ子どもを」と考えていること、育児期には片方の収入が減りうること、教育費もかかることを重ね合わせると、「30%超」の水準は将来かなり厳しくなると分かりました。そこでVさんご夫婦は、頭金を少し積み増し、物件のグレードも一段見直して借入額を5,000万円台前半に抑える判断をされました。返済比率は20%台に収まり、「教育費も老後の備えも、ローンと両立できそうだと安心できた」とのこと。

Vさんは「審査に通ったから大丈夫、と思い込んでいました。『借りられる額』と『返せる額』は別だと、数字で見せてもらって初めて腹落ちしました」とおっしゃってくださいました。住宅ローンは、人生でいちばん長くつき合う支出。だからこそ、入口の判断がその後の家計を大きく左右いたします。

― 私たちから一言 ―

「住宅ローンも相続も、出発点は『家計の見える化』です」

私たちは相続・終活のご相談を数多くお受けしておりますが、その入口でほぼ必ず話題になるのが、ご自宅の住宅ローンです。利上げで返済が重くなる局面では、「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」で家計を組み立て直すことが、ご本人の老後の安心にも、将来のご相続にも直結いたします。返済比率30%超は、その黄信号です。

とくに、変動金利の5年ルール・125%ルールは「急な負担増をやわらげる」しくみであって、負担そのものを消してくれるわけではありません。先送りされた利息は、いずれ家計に戻ってきます。だからこそ、上昇後の金額で一度シミュレーションし、手元の緊急資金を確保したうえで、繰り上げ返済・資産形成・教育費のバランスを考えることが大切です。これは、認知症対策や生命保険の活用といった、終活全体の資金計画とも地続きのテーマでございます。

当センターでは、提携のファイナンシャルプランナー・税理士・司法書士と連携し、住宅ローンを含む家計全体の見直しから、生前の資産整理、相続対策まで、一体的にお手伝いしております。「ローンと将来のお金、まとめて点検したい」――そうお感じになったら、お電話一本、LINEで結構でございます。どうぞお気軽にご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 日銀は2026年6月に政策金利を1%程度へ引き上げ、住宅ローンの変動金利も今秋から上昇する見込み。一段の利上げ(2027年に1.5%、その後2%程度)も視野に入る。
  • 銀行が貸す「借りられる額(上限)」と、家計が無理なく返せる「借りていい額」は別もの。審査に通った満額を借りると家計が苦しくなりかねない。
  • 目安は「返済比率(収入に占める年間返済額の割合)」。フラット35の基準は30〜35%以下。自分で試算するなら手取り(可処分所得)ベースが実感に近い。
  • 金利上昇の影響は借入額が大きいほど重い。5,000万円なら1%→2%で月約2.5万円増、1億円なら月約4.9万円・年約59万円の負担増(35年元利均等・日経試算)。
  • 手取りでみて「30%超」が借りすぎの境界線。30%を超えると負担感が増し、資産形成に取り組める割合が下がる。ペアローンや超長期返済にも別の注意点がある。
  • 変動金利の5年ルール・125%ルールは急な負担増をやわらげるが、利息が消えるわけではなく総返済額はむしろ増える。上昇後の金額で点検を。
  • 繰り上げ返済は、生活費の半年〜1年分の緊急資金を確保したうえで、資産形成・教育費とのバランスを考えて実施する。「借りていい額」は3つのポイント(返済以外の支出・年収の増減・借入額の削減余地)で見定める。

参考文献・出所

  • 日本経済新聞「日銀利上げ、住宅ローン『借りすぎ』いくら? 目安は返済比率30%超」(2026年6月17日 電子版)
  • 住宅金融支援機構「フラット35」総返済負担率の基準 https://www.flat35.com/
  • 総務省統計局「家計調査」(2025年・2人以上世帯) https://www.stat.go.jp/data/kakei/
  • 日本銀行「金融政策決定会合」公表資料 https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm
  • 株式会社MFS「モゲチェック」住宅ローン金利動向 https://mogecheck.jp/
  • 三井住友トラスト・資産のミライ研究所/ニッセイ基礎研究所 各種調査・レポート
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・借入・運用を推奨するものではございません。住宅ローンの適用金利・審査基準・各種ルールの取扱いは、金融機関や個別の事情により異なります。返済比率の試算は前提条件(借入額・金利・返済期間・可処分所得など)によって結果が大きく変わり、本記事の数値はあくまで一例です。実際の借り入れ・繰り上げ返済・資産運用の判断にあたっては、必ず金融機関・ファイナンシャルプランナー・税理士などの専門家にご確認・ご相談ください。本記事の内容は2026年6月時点の情報に基づきます。金利・税制・各種制度は変更される場合がありますので、最新の情報をご確認ください。

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