尊厳死宣言公正証書とリビング・ウイル――延命治療についての意思の残し方、法的拘束力の限界、ACP(人生会議)との関係を完全ガイド
「管につながれてまで生きたくないのです。そう書いておけば、その通りにしてもらえますか」――終活のご相談で、静かにこう切り出される方がいらっしゃいます。意思を残す方法として知られるのが、リビング・ウイル(尊厳死の宣言書)と、公証人が作る尊厳死宣言公正証書です。ただし2026年8月時点で、日本には尊厳死を一般的に制度化した法律はなく、これらの書面が医師や医療機関を直接法的に拘束するものとはいえない、というのが一般的な理解です。では無意味かというと、まったく違います。厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年3月改訂)は、本人の意思を基本に、医療・ケアチームで慎重に判断し、話し合いを繰り返して文書化・共有する手順を示しています。書面は「命令」ではなく、ご家族が本人の意思を推定するときの、いちばん確かな手がかりとして働くのです。本記事では、尊厳死と安楽死の違い、公証人手数料令にもとづく1万3,000円程度という費用の目安(2025年10月改定後)、ACP(アドバンス・ケア・プランニング、2018年11月に愛称「人生会議」を公表)の考え方、そして「遺言に書いても機能しない理由」(民法985条)や任意後見人に包括的な医療同意権が当然には生じないことまで、落ち着いて整理します。