住宅取得等資金の贈与の非課税特例とは――親・祖父母からの住宅資金援助を非課税に
住宅取得等資金の贈与の非課税特例とは、父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住むための住宅の新築・取得・増改築等のための資金の贈与を受けた場合に、一定額までを贈与税の課税価格に算入しない(非課税とする)という制度です。根拠となる法律は租税特別措置法第70条の2で、国税庁のタックスアンサーNo.4508「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」で案内されています。
そもそも、個人から現金や預金をもらうと、原則として贈与税がかかります。1年間にもらった財産の合計から基礎控除110万円を差し引いた残りに対して課税されるのが基本です。しかし、住宅取得等資金についてこの特例を使うと、その基礎控除とは別枠で、大きな金額まで非課税にできるのです。
→ 省エネ等住宅なら1,000万円まで非課税
住宅を持つには大きな資金が必要です。若い世代が親や祖父母の世代から住宅資金の援助を受けやすくすることで、住宅取得を後押しし、あわせて高齢世代から現役世代への資産移転を促す――そうした政策的な目的から設けられている特例です。
いくらまで非課税か――省エネ等住宅1,000万円・それ以外500万円
この特例の非課税限度額は、取得する住宅が「省エネ等住宅」かどうかで二段階に分かれています。
| 住宅の区分 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 |
| 省エネ等住宅以外の住宅 | 500万円 |
「省エネ等住宅」とは、省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性のいずれかについて一定の基準を満たす住宅をいい、断熱等性能等級や耐震等級などの基準に適合していることを証明する書類(住宅性能証明書や建設住宅性能評価書の写しなど)を申告書に添付することで、この区分の適用を受けられます。基準の詳細や必要書類は制度改正で変わり得ますので、実際の適用にあたっては国税庁の最新情報や、住宅の売主・施工会社にご確認ください。
いつまでの贈与が対象か――令和8年12月31日まで
この特例は期間限定の措置で、これまでも何度か延長・見直しが行われてきました。2026年(令和8年)7月現在の適用期限は、令和8年(2026年)12月31日までの贈与です。
令和6年1月1日 〜 令和8年12月31日 の贈与
注意したいのは、「贈与を受けた年」だけでなく、その資金で住宅を取得し、実際に居住する時期にも要件があることです。原則として、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その資金の全額を住宅の新築・取得・増改築等に充て、同日までにその住宅に居住するか、または遅滞なく居住することが確実であると見込まれることが必要です。「もらったお金をしばらく寝かせておく」といった使い方では要件を満たさないおそれがあります。
誰が誰に贈与できるか――贈与者・受贈者の要件
この特例は、誰から誰への贈与でも使えるわけではありません。贈与する側(贈与者)と、もらう側(受贈者)の双方に要件があります。
贈与者――父母・祖父母などの「直系尊属」
贈与できるのは、受贈者から見て直系尊属にあたる人、つまり父母・祖父母・曽祖父母などです。ここで大切なのは、配偶者の父母(義父母)は直系尊属にあたらないという点です。たとえば夫が妻の実家(義父母)から住宅資金をもらっても、この特例は使えません。ただし、養子縁組をしている養親は直系尊属に含まれます。
受贈者――主な要件
もらう側には、次のような要件があります(主なもの)。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 贈与者との関係 | 贈与者の直系卑属(子・孫など)であること |
| 年齢 | 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること |
| 所得 | 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること (取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下) |
| 居住 | 贈与の翌年3月15日までにその家屋に居住するか、遅滞なく居住することが確実と見込まれること |
このほかにも、過去に一定の住宅資金非課税の適用を受けていないことや、原則として配偶者・親族など特別の関係がある人から住宅を取得したものでないことなど、いくつかの細かな要件があります。ご自身が要件に当てはまるかは、必ず国税庁のタックスアンサーや税理士でご確認ください。
対象になる住宅・ならない住宅――床面積と新築・中古・増改築
非課税の対象となるのは、あくまで受贈者自身が住むための住宅の新築・取得・増改築等の資金です。別荘や、他人に貸すための賃貸住宅の資金は対象になりません。住宅にも要件があります。
床面積の要件
かつ その2分の1以上を居住用に
床面積が40㎡以上240㎡以下で、かつその2分の1以上を受贈者の住まいとして使うことが必要です。240㎡を超える大きな住宅や、40㎡に満たない狭い住宅は対象外です。
新築・中古・増改築の別
- 新築・取得――新築住宅のほか、一定の要件を満たす中古住宅(既存住宅)の取得も対象になります。中古住宅は、原則として一定の耐震基準を満たすことなどが求められます。
- 増改築等――自分が住んでいる家屋の増築・改築・大規模な修繕なども対象です。ただし工事費用が100万円以上であることなどの要件があります。
暦年課税・相続時精算課税との併用――枠を重ねて使える
この特例の大きな魅力が、他の贈与の非課税枠と「重ねて」使えることです。
暦年課税の基礎控除110万円と併用
住宅資金の非課税枠は、暦年課税の基礎控除110万円とは別枠です。したがって、たとえば省エネ等住宅なら、1,000万円(住宅資金非課税)+110万円(基礎控除)=合計1,110万円まで、その年の贈与税を0円にできる計算になります。
= 最大1,110万円 まで贈与税0円
相続時精算課税とも併用できる
暦年課税ではなく相続時精算課税を選んでいる場合でも、この住宅資金の非課税特例と併用できます。相続時精算課税には特別控除2,500万円と、2024年から新設された年110万円の基礎控除があり、これらに住宅資金の非課税枠を上乗せして使うことが可能です。どちらの制度と組み合わせるのが有利かは、贈与の額や将来の相続の見通しによって変わりますので、税理士にご相談のうえ選択されることをお勧めします。
相続対策としての強み――非課税分は生前贈与加算の対象外、でも申告は必須
この特例は、贈与税を非課税にするだけでなく、相続対策としても有効です。その理由が、生前贈与加算との関係にあります。
通常、亡くなる前の一定期間内(2024年の改正で段階的に3年から7年へ拡大)に受けた暦年課税の贈与は、相続税の計算のうえで相続財産に加算されます(生前贈与加算)。ところが、住宅取得等資金の非課税特例によって非課税とされた金額は、この生前贈与加算の対象になりません。つまり、贈与税もかからず、将来の相続税の計算にも持ち戻されないという、二重に有利な扱いを受けられるのです。
ただし――贈与税が0円でも「申告」は絶対に必要
ここが最も見落とされやすい落とし穴です。この特例は、贈与税額が0円になる場合であっても、贈与税の申告をしなければ適用を受けられません。申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、非課税の計算明細書や住宅の登記事項証明書、省エネ等住宅であればその証明書類などを添えて、受贈者の住所地を管轄する税務署に行います。「非課税だから何もしなくてよい」と思い込み、申告を忘れてしまうと、せっかくの非課税が受けられず、多額の贈与税がかかってしまうおそれがあります。期限内の申告を必ず忘れないようにしてください。
なお、税務上の取扱いは個別の事情や制度改正によって変わり得ます。実際の申告にあたっては、最新の情報を国税庁や税理士に必ずご確認ください。
「父から1,000万円もらって家を建てた。非課税だと聞いて申告を忘れかけたケース」
Kさん(30代・男性)は、マイホームの新築にあたり、お父さまから1,000万円の資金援助を受けました。取得したのは省エネ基準を満たす住宅で、床面積・所得などの要件も満たしていました。知人から「住宅資金の贈与は1,000万円まで非課税だよ」と聞いていたKさんは、「では贈与税はかからないのだから、特に何もしなくてよいのだろう」と考えていました。
年が明けて確定申告の時期、たまたま当センターの無料相談にお越しになった際にこの話をうかがい、私たちは驚いてお伝えしました。「この特例は、贈与税が0円でも、翌年3月15日までに贈与税の申告をしないと適用が受けられません」と。Kさんは「申告が要るとは知らなかった。危うく1,000万円まるごと課税されるところだった」と青ざめておられました。
幸い、申告期限にはまだ間に合いました。当センターから提携税理士におつなぎし、必要書類をそろえて期限内に申告を済ませたことで、Kさんは無事に1,000万円の非課税を受けることができました。「非課税」と「申告不要」はまったく別のこと――この違いを知っているかどうかが、分かれ目になった事例です。
「使えば大きい。でも、要件と申告を丁寧に」
お子さんやお孫さんの住宅取得を援助したいというご相談は、本当に多くいただきます。この住宅資金贈与の非課税特例は、省エネ等住宅なら1,000万円という大きな金額を、贈与税ゼロで次の世代に渡せる、たいへん強力な制度です。しかも、非課税とされた分は将来の相続税の計算にも持ち戻されませんから、相続対策としても有効です。「元気なうちに、住まいという形で子や孫を応援できる」――これは贈る側にとっても嬉しいことだと思います。
ただ、繰り返しお伝えしたいのは、この特例は要件が細かく、しかも「贈与税が0円でも申告が必要」だということです。受贈者の年齢や所得、住宅の床面積や省エネ基準、資金を使う時期や居住の時期――どれか一つでも外れると使えないことがあります。特に申告を忘れると、非課税そのものが受けられなくなってしまいます。せっかくのご厚意が、思わぬ課税につながっては残念でなりません。
また、住宅資金の贈与は、暦年贈与や相続時精算課税、おしどり贈与といった他の制度と、どう組み合わせるのが有利かという視点も欠かせません。当センターでは、提携する税理士と連携し、ご家族全体の資産と将来の相続を見渡したうえで、いつ・誰に・いくら・どの制度で贈与するのが最もよいかを、中立的な立場でご一緒に考えます。住宅資金の援助をお考えなら、実行の前に、ぜひ一度ご相談ください。
住宅取得等資金の贈与の非課税特例でよくある7つの落とし穴
当センターへのご相談や情報収集の中で見えてきた、この特例をめぐるよくある誤解と落とし穴を7つに整理いたしました。
- 「非課税だから申告は不要」と思い込む 贈与税が0円でも、翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしなければ適用を受けられません。申告を忘れると多額の課税につながります。
- 義父母(配偶者の親)からの贈与でも使えると考える 対象は直系尊属からの贈与です。配偶者の父母(義父母)は直系尊属にあたらず、対象になりません。
- 省エネ等住宅の証明書類をそろえ忘れる 1,000万円の枠を使うには、省エネ・耐震・バリアフリーの基準を満たすことの証明書類を申告書に添付する必要があります。書類がないと500万円の枠になってしまうことがあります。
- 床面積や所得の要件を見落とす 床面積は原則40㎡以上240㎡以下。合計所得金額は2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満なら1,000万円以下)です。要件を外れると使えません。
- もらった資金を使わずに寝かせてしまう 原則として翌年3月15日までに全額を住宅の取得・増改築等に充て、居住するか居住が確実と見込まれることが必要です。使わずに残すと要件を満たさないおそれがあります。
- 住宅ローンの返済や土地だけの購入に充てる すでにあるローンの返済や、住宅取得を伴わない土地だけの購入は対象外です。これから取得・増改築する住宅の資金であることが必要です。
- 適用期限や限度額が「ずっと同じ」だと思い込む この特例は限度額や期限がたびたび改正されてきた制度です。適用期限は令和8年12月31日まで。実行前に必ず国税庁の最新情報を確認してください。
この記事のまとめ
- 住宅取得等資金の贈与の非課税特例(租税特別措置法70条の2・国税庁タックスアンサーNo.4508)は、父母・祖父母などの直系尊属から住宅の新築・取得・増改築の資金をもらったとき、一定額まで贈与税が非課税になる制度。
- 非課税限度額は、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円。
- 2026年7月現在の適用期限は令和8年(2026年)12月31日までの贈与。限度額・期限は改正され得る。
- 受贈者は、贈与を受けた年の1月1日に18歳以上、合計所得金額2,000万円以下(床面積40㎡以上50㎡未満は1,000万円以下)などが要件。贈与者は直系尊属で、義父母は対象外。
- 対象住宅の床面積は原則40㎡以上240㎡以下で、2分の1以上を居住用に使うこと。住宅ローンの返済や土地だけの購入は対象外。
- 暦年課税の基礎控除110万円や相続時精算課税と併用できる(省エネ等住宅なら1,000万+110万=1,110万円まで贈与税0円)。
- 非課税とされた金額は生前贈与加算の対象にならず、相続対策としても有効。
- ただし贈与税が0円でも、翌年2月1日から3月15日までの贈与税の申告が必須。申告を忘れると適用を受けられない。
参考文献(一次情報)
- 国税庁 タックスアンサー No.4508「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4508(別冊 質疑応答・添付書類等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508_qa.htm
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」(第70条の2 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税) https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
- 国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」(タックスアンサーNo.4408) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm
住宅資金の援助、いちばん有利な形をご一緒に
いくらまで非課税か、どの制度と組み合わせるか、申告はどうするか――
提携する税理士と連携し、ご家族の資産と将来の相続を見渡して、中立的な立場でサポートします。