「年金」という名前だけれど、遺族年金ではありません

まず、いちばん誤解されやすいところから整理いたします。確定拠出年金は「年金」と名前がついていますが、公的年金とはまったく別の制度です。

公的年金と確定拠出年金の違い

国民年金・厚生年金といった公的年金では、加入者が亡くなると遺族基礎年金・遺族厚生年金という継続的な給付が、要件を満たす遺族に支給されます。これは受け取る遺族自身に生じる権利であって、亡くなった方の財産ではありません。

これに対して確定拠出年金は、加入者ご本人の名義で積み立てられ、ご本人が運用してきた「残高」がある制度です。加入者が亡くなった時点で残高がある以上、それを誰かに渡さなければなりません。その受け皿が死亡一時金です。企業型DCについて確定拠出年金法40条が死亡一時金の支給を定め、iDeCo(個人型)についても同法73条によって同様の規定が準用されています。

比較項目公的年金(遺族年金)確定拠出年金(死亡一時金)
性格 遺族自身に生じる権利。継続的な給付 加入者の積立残高を、一時金として支給
受け取る人 法律が定める遺族の範囲・順位(生計維持要件あり) 生前指定があればその方。なければ確定拠出年金法41条1項の順位
遺産分割 対象外 受給権者に支給されるもので、遺産分割の対象とは扱われないのが一般的
税金 遺族基礎年金・遺族厚生年金は非課税とされている 3年以内の確定なら相続税(退職手当金等)、3年経過後の確定なら一時所得
[「遺産分割の対象外」の意味]
死亡一時金は、法律が定めた受給権者が、自分自身の権利として受け取るものと整理されています。したがって、遺産分割協議で「誰がいくら受け取るか」を決める性質のものではありません。ただし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれるという点は別問題です。「遺産分割の対象ではない」ことと「相続税がかからない」ことは、まったく違います。ここは生命保険金と似た構造で、詳しくは生命保険を使った相続対策の記事もご覧ください。

亡くなったあとに「運用」は続くのか

加入者が亡くなった旨の届出がされると、運用は停止され、資産は現金化されたうえで死亡一時金として支給されるのが一般的な流れです。つまり、届出が遅れれば、その間の相場変動をそのまま受け続けることになります。ご家族が「iDeCoがあるらしい」と気づいた段階で、まず記録関連運営管理機関(レコードキーパー)または運営管理機関に連絡を入れることが、実務上いちばん大切な初動です。具体的な取扱いは規約や機関によって異なりますので、必ずご加入先にご確認ください。

受取人を決めるのは遺言ではなく法律――確定拠出年金法41条の法定順位

ここが本記事の核心です。確定拠出年金の死亡一時金を誰が受け取るかは、確定拠出年金法41条1項が定めています。

指定がない場合の法定順位

加入者が生前に受取人を指定していなかった場合、死亡一時金を受けることができる遺族の順位は、確定拠出年金法41条1項各号により、おおむね次のとおりとされています。

  1. 配偶者――ここでいう配偶者には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者(いわゆる事実婚の配偶者)を含むとされています。
  2. 死亡の当時、主として加入者の収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹
  3. 上記2に該当しない者で、死亡の当時、主として加入者の収入によって生計を維持していた親族
  4. 子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹で、上記2に該当しない者(=生計維持関係がなかった方)

第2順位・第4順位のグループの内部では、原則として、子 → 父母 → 孫 → 祖父母 → 兄弟姉妹の順で扱われます(確定拠出年金法41条2項)。同項は父母については養父母・実父母の順、祖父母については養父母の養父母・養父母の実父母・実父母の養父母・実父母の実父母の順とすることまで定めています。同順位の方が複数いる場合は、その人数によって等分して支給されます(同条3項)。

民法の法定相続人と一致するとは限りません

ここが最大の注意点です。たとえば事実婚の配偶者は民法上の相続人ではありませんが、確定拠出年金法41条1項では第1順位として扱われます。逆に、生計維持関係のなかった兄弟姉妹が第4順位で受け取ることもあり得ます。「相続人だから受け取れる」「相続人でないから受け取れない」という発想は、この制度には当てはまりません。事実婚のご家庭の相続については内縁・事実婚と相続の記事もご覧ください。

受取人 = 生前指定があればその方
なければ 確定拠出年金法41条1項の法定順位
遺言書に「iDeCoは長男に」と書いても、この順位を動かすことはできないものとして扱われるのが一般的です

遺言で受取人を変えられるか

実務では、遺言によって死亡一時金の受取人を指定することはできないものとして扱われるのが一般的です。死亡一時金は遺産そのものではなく、法律と規約に基づいて受給権者に支給されるものだからです。受取人をご自身の意思で決めたいのであれば、遺言ではなく、生前に運営管理機関へ受取人指定の届出をしておく――これが最も確実な方法です。遺言でできること・できないことについては遺言書の種類の記事もあわせてご覧ください。

生前に指定できる範囲には限りがある――配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹

では、その「生前指定」はどこまで自由にできるのでしょうか。

指定できる者の範囲(確定拠出年金法41条1項ただし書)

加入者は、死亡する前に、次の者のうちから死亡一時金を受ける者を指定し、その旨を企業型記録関連運営管理機関等に対して表示したときは、その表示したところによるとされています。

  1. 配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)
  2. 父母
  3. 祖父母
  4. 兄弟姉妹

この範囲内であれば、生計維持関係の有無を問わず指定できるのが通常の取扱いです。一方で、この枠から外れる方――たとえばおい・めい、いとこ、内縁関係にないパートナー、友人、法人などを受取人に指定することはできません。

「お世話になった方に残したい」は、この制度では叶いません

生命保険であれば、保険会社の引受け基準の範囲内で、比較的柔軟に受取人を決められることがあります。しかし確定拠出年金の死亡一時金は、法律が指定できる範囲そのものを限定しています。身寄りの少ない方が「長年介護してくれたおいに残したい」とお考えでも、この制度の中では実現できません。そうしたご希望がある場合は、確定拠出年金以外の方法(生命保険、遺贈、死因贈与など)を組み合わせて設計する必要があります。遺贈については遺贈・寄付の記事もご覧ください。

指定は「しておく」だけで結論が変わる

受取人の指定は、多くの運営管理機関で所定の届出書1枚で済みます。にもかかわらず、指定をしないまま加入を続けている方が非常に多いのが実情です。指定がないと、法定順位に従って受給権者を確定する作業が必要になり、戸籍の収集や生計維持関係の確認に時間がかかります。

とくに、お子さんのいらっしゃらないご夫婦再婚されている方事実婚のパートナーがいらっしゃる方は、指定の有無で結論が大きく変わり得ます。前婚のお子さんがいらっしゃる場合の相続については前婚の子と再婚後の相続の記事もあわせてご覧ください。

[エンディングノートに「加入先」を書いておく]
受取人の指定と同じくらい大切なのが、「どこの金融機関で加入しているか」をご家族に伝わる形にしておくことです。確定拠出年金は郵便物が年に数回しか届かないこともあり、ご家族が存在自体に気づかないケースが現実に起きています。エンディングノートの書き方はエンディングノートの記事をご覧ください。

5年間請求しないとどうなるか――遺族はないものとみなされる(41条5項)

次に、期限の話です。確定拠出年金の死亡一時金には、「死亡後5年」という区切りがあります。

条文はどう定めているか

確定拠出年金法41条5項は、死亡一時金を受けることができる者による裁定の請求が加入者等の死亡の日から5年間ないときは、死亡一時金を受けることができる遺族はないものとみなす旨を定めています。

その結果、同条4項が適用され、死亡一時金に相当する額は、特定の遺族に支給されるのではなく、死亡した加入者等の相続財産とみなされることになります。

死亡から5年間、裁定請求がない

受けられる遺族はないものとみなされる(41条5項)

資産は相続財産として扱われる(41条4項)
受給権者固有の権利ではなくなり、遺産分割・相続手続きの土俵に移ります

「相続財産になる」ことの実務上の重さ

一見すると「結局は家族が受け取るのだから同じでは」と思われるかもしれません。しかし、実務上は大きく違います。

  1. 受け取る人が変わり得る 死亡一時金であれば第1順位の配偶者が全額を受け取れたはずが、相続財産となれば法定相続人全員での遺産分割の対象になります。事実婚の配偶者は、民法上の相続人ではないため、相続財産となった時点で受け取る立場を失います。
  2. 手続きが重くなる 死亡一時金の裁定請求であれば受給権者ご本人の手続きで済みますが、相続財産となれば、戸籍一式の収集、相続人全員の署名押印、遺産分割協議書といった通常の相続手続きが必要になります。相続人の調査は戸籍収集と法定相続情報一覧図の記事もご覧ください。
  3. 税務の扱いも変わる 後述のとおり、退職手当金等としての非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えるかどうかにも影響し得ます。
[5年は「請求」の期間であって「支払」の期間ではありません]
41条5項が見ているのは、裁定の請求があったかどうかです。5年以内に適法な裁定請求をしていれば、審査や支払が5年を超えたというだけで、直ちに相続財産に切り替わるわけではありません。もっとも、実務では余計な争点を作らないためにも、できるだけ早く請求するのが賢明です。

「3年」と「5年」は別の制度です

ここは非常に混同されやすいところですので、はっきり分けておきます。

期間何の期間か根拠
3年 税務――死亡後3年以内に支給額が確定したかどうかで、相続税か所得税かが分かれる 相続税法3条1項2号
5年 制度――死亡後5年間、裁定請求がないと遺族はないものとみなされ、相続財産になる 確定拠出年金法41条5項・4項
ご相談事例

※ 以下は、実際のご相談を踏まえて構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「証券会社からの封筒を、ずっと開けていませんでした」

ご相談にいらしたのは、お父さまを2年前に亡くされた50代の男性でした。相続手続きはひととおり終えたつもりでいらしたそうです。ところが、実家を片づけている最中に、ある証券会社からの未開封の封筒を見つけられました。中身は個人型確定拠出年金(iDeCo)の残高のお知らせでした。

「銀行の通帳も保険証券も全部確認したつもりだったのですが、これだけは頭になくて」――そうおっしゃっていました。iDeCoは通帳がなく、届く郵便物も年に数回です。ご家族が気づかないまま時間が過ぎてしまうのは、決して珍しいことではありません。

私たちがまずお伝えしたのは、「今すぐ、記録関連運営管理機関に連絡してください」ということでした。死亡後5年を過ぎてしまうと、死亡一時金として受け取れる遺族はないものとみなされ、相続財産として、あらためて相続人全員での手続きが必要になってしまうからです。ご相談の時点で2年が経過していましたので、残された時間は3年ということになります。

もうひとつお伝えしたのが、税務のご相談を並行してしていただくことでした。死亡後3年を過ぎてから支給額が確定した場合、相続税ではなく、受け取った方の一時所得として所得税の対象になると国税庁は示しています。この事案はすでに死亡から2年が経過しており、3年の線を超えるかどうかが微妙でした。ご相談者には税理士をご紹介し、「請求のタイミングだけでなく、支給額の確定日を記録しておいてください」とお願いしました。

この事案でお伝えしたいのは、確定拠出年金は「見つけにくい財産」だという一点です。相続財産の調査では、不動産・預金・保険と並べて、必ず「勤務先の企業型DC」「証券会社のiDeCo」を確認項目に入れていただきたいと、私たちは考えています。財産の調べ方は相続財産の調べ方の記事もご参照ください。

税金の分かれ目は「死亡後3年以内に支給額が確定したか」(相続税法3条1項2号)

ここからは税金の話です。確定拠出年金の死亡一時金は、受け取り方によって課される税目が変わります。

死亡後3年以内に支給額が確定した場合――相続税

相続税法3条1項2号は、被相続人の死亡によって支給される退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものを、相続または遺贈により取得したものとみなす旨を定めています。

国税庁は、確定拠出年金法に基づく企業型年金規約または個人型年金規約に基づいて支給される一時金についても、この「退職手当金等」に含まれるものとして取り扱うとしています。したがって、死亡後3年以内に支給額が確定した死亡一時金は、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。

支給額の確定が死亡後3年以内
→ 退職手当金等として相続税(相続税法3条1項2号)
判定するのは「実際の振込日」ではなく「支給額が確定した日」です

大事なのは、基準が「実際に支払われた日」ではなく「支給額が確定した日」だという点です。3年以内に支給額が確定していれば、実際の入金が3年を過ぎたとしても、相続税の対象として扱われます。

この場合、相続税の課税対象となるため、同じ金銭に所得税・復興特別所得税が重ねてかかることはないと整理されています。

死亡後3年を経過してから支給額が確定した場合――一時所得

これに対して、死亡後3年を経過してから支給額が確定したものは、相続税法3条1項2号の「3年以内に支給が確定した退職手当金等」には当たりません。国税庁は、この場合には受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象になるとしています(所得税基本通達9-17、34-2)。

3年を超えると、非課税枠は使えません

一時所得として課税される場合、相続税法12条1項6号の「500万円×法定相続人の数」という非課税枠は使えません。一時所得には特別控除額(最高50万円)があり、所得金額の2分の1が総合課税の対象となる計算構造ですが、他の所得と合算されるため、税負担が重くなることも十分に考えられます。「請求を先延ばしにする」ことに、税務上のメリットはありません。具体的な有利不利はご事情によって異なりますので、必ず税理士にご相談ください。

支給額の確定時期税務上の扱い500万円×法定相続人の非課税枠
死亡後3年以内に確定 退職手当金等としてみなし相続財産。相続税の対象 適用の余地あり(相続人が取得した部分について)
3年以内に確定し、支払が3年経過後 相続税の対象(確定日で判定) 適用の余地あり
死亡後3年を経過してから確定 受け取った方の一時所得(所得税) 使えない
― 私たちから一言 ―

「届出書1枚で防げることが、あまりにも多いのです」

確定拠出年金の死亡一時金について、私たちが現場でいちばん強く感じているのは、「生前にできたことが、驚くほど簡単だった」という悔しさです。

受取人の指定は、届出書1枚です。加入先を書き留めておくのも、エンディングノートの1行です。この2つがあるかないかで、残されたご家族の手間はまったく違ってきます。指定があれば、その方が裁定請求をすれば終わります。指定がなければ、法定順位に沿って受給権者を確定するために、戸籍を集め、生計維持の関係を確認していく作業が必要になります。ご家族が悲しみの真っただ中にいる時期に、です。

そして、もうひとつ申し上げたいのが、「iDeCoは、相続の現場で最も見つかりにくい財産のひとつになりつつある」ということです。預金には通帳があります。保険には証券があり、生命保険契約照会制度という調べる手段もあります。不動産には名寄帳があります。ところが確定拠出年金には、それに相当する分かりやすい入口がありません。ご本人がお元気なうちに書き残していただくのが、いちばん確実な方法なのです。

最後に、期限のことを重ねて申し上げます。5年を過ぎると、死亡一時金を受けられる遺族はないものとみなされ、相続財産として扱われます。3年を過ぎると、税金の扱いが相続税から一時所得に変わります。どちらも、「早く気づいて、早く請求する」ことだけで避けられるものです。当センターでは、相続財産の洗い出しから、金融機関への照会、税理士・社会保険労務士のご紹介まで、一貫してお手伝いしております。「亡くなった父がiDeCoをやっていたようなのだけれど」――そのひと言だけで結構です。どうぞお気軽にお電話ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

500万円×法定相続人の非課税枠――使える人と、使えない人(相続税法12条1項6号)

死亡一時金が退職手当金等として相続税の対象になる場合、相続税法12条1項6号の非課税規定を使える余地があります。

退職手当金等の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
生命保険金の非課税枠とは別枠で、それぞれに500万円×法定相続人の数が用意されています

使えるのは「相続人が取得した部分」だけ

ここが最も誤解されやすい点です。国税庁は、この非課税限度額は、相続人が取得した退職手当金等について適用され、相続人以外の方が取得した退職手当金等は課税対象になると説明しています。

確定拠出年金の死亡一時金は、前述のとおり民法上の相続人ではない方(事実婚の配偶者など)が受給権者になり得ます。その場合、受け取った方は相続人ではないため、この非課税枠の対象外という整理になります。「制度上は優先的に受け取れるのに、税務では非課税枠が使えない」という、ねじれが生じ得るところです。

  1. 非課税限度額は、相続人が取得した退職手当金等の合計額に対して適用される
  2. 相続人以外の方が受け取った部分は、原則として非課税枠の対象外
  3. 勤務先からの死亡退職金など、他の退職手当金等があれば合算して限度額を判定する
  4. 「法定相続人の数」は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数で計算する
[死亡退職金と合算されます]
会社にお勤めだった方が亡くなり、勤務先から死亡退職金が支給され、さらに企業型DCの死亡一時金も支給されるというケースは珍しくありません。この場合、両方を合わせて「退職手当金等」として非課税限度額を判定することになります。「それぞれに500万円×法定相続人の枠がある」わけではありません。死亡退職金の詳細は死亡退職金と弔慰金の相続税の記事をご覧ください。

生命保険金の非課税枠とは別枠です

一方で、生命保険金等の非課税枠(相続税法12条1項5号)と、退職手当金等の非課税枠(同項6号)は、それぞれ別に設けられています。したがって、生命保険金と死亡退職金等の双方がある場合には、それぞれについて500万円×法定相続人の数の限度額を判定することになります。合算して1つの枠になるわけではありません。

なお、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)は、これらの非課税枠とはさらに別のものです。基礎控除については相続税の基礎控除の記事をご覧ください。

手続きの実際――連絡先の見つけ方、自動移換されていた場合、必要書類

最後に、実際の手続きを見ていきます。

まず「どこに連絡するか」を突き止める

確定拠出年金は、企業型DCなら勤務先を通じて、iDeCoなら加入時に選んだ運営管理機関(金融機関)を通じて管理されています。ご家族が探す際の手がかりは、次のようなものです。

  1. 年に数回届く「お取引状況のお知らせ」――封筒の差出人が運営管理機関または記録関連運営管理機関です
  2. 勤務先・元勤務先の人事・総務部門――企業型DCに加入していたかどうかを確認できます
  3. 預金通帳の引落し履歴――iDeCoの掛金は口座振替であることが多く、毎月同額の引落しが手がかりになります
  4. 確定申告書・年末調整の書類――小規模企業共済等掛金控除の欄に記載が残っていることがあります
  5. パソコン・スマートフォンのメールやブックマーク――デジタル遺産の探し方はデジタル遺産と終活の記事もご覧ください

「自動移換」されていた場合

企業型DCの加入者資格を喪失したあと、他の企業型DCやiDeCoへ移換する手続きを一定期間内に行わなかった場合、資産は国民年金基金連合会へ自動移換される取扱いがあります。確定拠出年金法は、企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6か月以内に移換がされなかった個人別管理資産について、この取扱いを定めています。

自動移換されると、資産は現金化され、運用がされない状態となり、手数料が控除されることがあります。転職・退職の経験がある方については、「前の勤務先のDCが、そのまま自動移換されている」可能性を必ず確認してください。

自動移換の「6か月」と、死亡一時金の「5年」は別の制度です

自動移換は、加入者資格を喪失したあとに移換手続きをしなかった場合の制度であり、加入者が亡くなったあとの未請求の死亡一時金が「自動移換」されるという意味ではありません。ただし、すでにご生前に自動移換されていた資産がある場合は、通常の運営管理機関ではなく自動移換先を含めて請求先を特定する必要があります。自動移換済みであっても、死亡一時金の受給順位や、税務上の3年判定がなくなるわけではありません。

必要書類の目安

請求に必要な書類は運営管理機関や規約によって異なりますが、おおむね次のようなものが求められるのが一般的です。必ず請求先にご確認ください。

  1. 裁定請求書(運営管理機関所定の様式)
  2. 加入者の死亡の事実が分かる書類(除籍謄本、死亡診断書の写しなど)
  3. 請求する方と加入者の関係が分かる戸籍謄本等
  4. 請求する方の本人確認書類・振込先口座が分かる書類
  5. 生計維持関係を確認する書類(法定順位で請求する場合。住民票、扶養の事実が分かる書類など)
[死亡の届出は、請求とは別に、まず先に]
「加入者が亡くなった」という届出と、「死亡一時金を請求する」という裁定請求は別の手続きです。実務では、まず死亡の届出をして運用を止め、そのうえで受給権者を確定して裁定請求という流れになります。亡くなった直後の手続き全般は身近な人が亡くなったらすぐやる手続きの記事をご覧ください。

確定拠出年金の死亡一時金でよくある7つの落とし穴

最後に、実務でとくに多い誤解を7つ、整理いたします。

  1. 遺産分割協議書に書けば分けられると思っている 死亡一時金は、確定拠出年金法41条が定めた受給権者が、自分自身の権利として受け取るものと整理されています。遺産分割協議でその配分を決める性質のものではありません。もっとも、相続税の計算上はみなし相続財産として課税対象に含まれます。
  2. 遺言書に書いておけば受取人を変えられると思っている 実務では、遺言で死亡一時金の受取人を指定することはできないものとして扱われるのが一般的です。受取人を決めたいなら、生前に運営管理機関へ受取人指定の届出をする――これが確実な方法です。
  3. 「相続人しか受け取れない」と思っている 事実婚の配偶者は民法上の相続人ではありませんが、確定拠出年金法41条1項では第1順位として扱われます。民法の法定相続人の順位とは別のルールです。
  4. 受取人に誰でも指定できると思っている 指定できるのは配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹に限られます(確定拠出年金法41条1項ただし書)。おい・めい、いとこ、友人、法人などは指定できません。
  5. 「3年」と「5年」を混同している 3年は税務の分かれ目(相続税法3条1項2号。支給額の確定が3年以内なら相続税、3年経過後なら一時所得)、5年は制度の期限(確定拠出年金法41条5項。裁定請求がないと遺族はないものとみなされ、相続財産になる)です。まったく別の制度です。
  6. 非課税枠500万円×法定相続人が、誰にでも使えると思っている 国税庁は、退職手当金等の非課税限度額は相続人が取得した部分について適用され、相続人以外の方が取得した部分は課税対象としています。また勤務先の死亡退職金がある場合は合算して限度額を判定します。
  7. そもそも加入していたことに、ご家族が気づかない 確定拠出年金は通帳がなく、郵便物も年に数回です。相続財産の調査項目に「勤務先の企業型DC」「証券会社のiDeCo」を必ず入れてください。ご本人には、エンディングノートに加入先を1行書き残しておくことを強くおすすめいたします。

この記事のまとめ

  • 確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)の加入者が亡くなると、その資産は「死亡一時金」として遺族に支給される。企業型DCについて確定拠出年金法40条が定め、個人型(iDeCo)についても同法73条により同様の規定が準用されている。
  • 受取人は、加入者が生前に指定していればその方。指定がなければ確定拠出年金法41条1項の法定順位(①配偶者〈事実婚を含む〉、②生計を維持していた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹、③その他の生計維持親族、④生計維持関係のなかった子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹)。民法の法定相続人と一致するとは限らない。
  • 生前に指定できる範囲は配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹に限られる(同項ただし書)。おい・めい、友人、法人などは指定できない。
  • 死亡の日から5年間、裁定請求がないときは、死亡一時金を受けることができる遺族はないものとみなされ(確定拠出年金法41条5項)、資産は相続財産として扱われる(同条4項)。5年は「請求」の期間であり、支払の期間ではない。
  • 税務は「支給額が死亡後3年以内に確定したか」で分かれる。3年以内の確定なら、退職手当金等としてみなし相続財産となり相続税の対象(相続税法3条1項2号)。国税庁は、確定拠出年金の規約に基づく一時金も退職手当金等に含まれるものとして取り扱っている。
  • 3年を経過してから確定したものは、受け取った方の一時所得として所得税の対象(所得税基本通達9-17、34-2)。この場合、退職手当金等の非課税枠は使えない。
  • 相続税の対象となる場合、500万円×法定相続人の数の非課税限度額(相続税法12条1項6号)を使える余地がある。ただし相続人が取得した部分について適用され、相続人以外の方が取得した部分は課税対象。勤務先の死亡退職金があれば合算して限度額を判定する。
  • 生命保険金等の非課税枠(同項5号)と退職手当金等の非課税枠(同項6号)は別枠。さらに相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)とも別
  • ご生前に企業型DCの資格を喪失し、一定期間内に移換手続きをしなかった場合、資産は国民年金基金連合会へ自動移換されている可能性がある(資格を喪失した日が属する月の翌月から起算して6か月)。自動移換の6か月と、死亡一時金の5年は別の制度。
  • いちばんの対策は「受取人の指定届を出しておくこと」と「加入先をご家族に伝わる形で書き残しておくこと」の2つ。確定拠出年金は、相続の現場で最も見つかりにくい財産のひとつ。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。死亡一時金の受給権者が誰になるか、生計維持関係が認められるか、支給額の確定日がいつになるかは、規約の定めと個別の事実関係によって判断される事項であり、本記事の記載によって結論を保証するものではありません。受取人指定の届出方法、請求に必要な書類、運用停止のタイミング、自動移換の取扱いは、運営管理機関・記録関連運営管理機関および規約によって異なります。必ずご加入先にご確認ください。税務上の取扱い(相続税か一時所得か、非課税限度額を適用できるか)は、支給額の確定時期や受け取る方が相続人であるかどうかによって変わり、有利不利はご事情によって異なります。必ず税理士または所轄税務署にご確認ください。記載した条文番号・通達番号は執筆時点で一次情報により確認したものですが、法令・通達および運用は改正される可能性があります。本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいていますが、実際にお手続きをされる際は、必ずe-Gov法令検索国税庁厚生労働省などの一次情報で最新の内容をご確認のうえ、税理士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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