「亡くなった父あてに納税通知書が届きました」――まず何が起きているのか

最初に、混乱しやすい点をひとつだけ整理させてください。固定資産税は、月割りや日割りにはなりません。年の途中で所有者が亡くなっても、その年度分の税額が按分されることはなく、1年分がまるごと課税されているという前提から出発します。

 よくある思い込み実際の取り扱い
本人が亡くなったら 課税もなくなるのでは なくなりません。納付の義務が相続人に承継される(地方税法9条)
年の途中の死亡 亡くなった日で日割りされるのでは 日割りはありません。賦課期日(1月1日)の所有者に1年分が課される
相続登記が済むまで 課税は止まるのでは 止まりません。登記が未了でも課税は続く
誰が払うのか 不動産を相続した人だけ 遺産分割が済むまでは相続人全員に関わる問題。通知の宛先は代表者を届け出て決める
払わずに放置したら そのうち市役所が整理してくれる 延滞金が加算され、督促・滞納処分の対象になり得る
固定資産税は日割りされない
1月1日の所有者に1年分が課される
地方税法359条(賦課期日)・343条(納税義務者)

まず、封書を開けて三つを確認してください

納税通知書には、その不動産について市区町村が把握している情報が詰まっています。相続実務では、この一通が「財産の目録」の役割を果たすことがあります。

[課税明細に載らない不動産があります]
納税通知書に載っているのは、課税されている不動産です。免税点(後述)に満たない土地や、非課税とされている土地(公衆用道路など)は、課税明細書に記載されない、あるいは記載されても税額が0となる取り扱いがあり、これが見落としの原因になります。ご不安があれば、市区町村の税務担当課で「名寄帳(固定資産課税台帳)」の写しを取得してください。その市区町村内にある被相続人名義の不動産が一覧になります。財産の探し方全般については相続財産の調べ方の記事で網羅的に整理しています。

賦課期日は1月1日――1年分は「その日の所有者」に課される(地方税法359条・343条)

ここが、この記事のいちばん大切な土台です。ふたつの条文をおさえてください。

賦課期日 = 毎年1月1日(地方税法359条)
納税義務者 = その日の「所有者」(同343条)
「所有者」とは、原則として登記簿または補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者をいいます

「所有者」の意味――登記簿を見て決められます

固定資産税は、毎年、膨大な数の不動産について一斉に課税されます。ですから、誰が真の所有者かを実質的に調べ上げてから課税する、というやり方は取られていません。地方税法343条2項は、土地・家屋については「登記簿又は土地補充課税台帳・家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者」を所有者とする、と定めています。登記の記載を基準にする――これが原則です。

この「台帳課税主義」と呼ばれる考え方があるために、相続登記をしないまま何年も放置していると、いつまでも被相続人名義のまま課税が続くという事態が生じます。

死亡の時期で、その年度の扱いが変わります

実務でつまずきやすいのは、「いつ亡くなったか」によって、その年度の課税の考え方が変わる点です。表で整理します。

死亡の時期その年度分の納税義務者実務上の対応
1月1日より後に死亡
(例:3月に死亡)
賦課期日にはご存命でしたので、被相続人が納税義務者です。その納付義務を相続人が承継します(地方税法9条) 相続人代表者指定(届出)書を提出し、通知の宛先を定めます
1月1日より前に死亡
(例:前年11月に死亡)
賦課期日に登記名義人はすでに亡くなっているため、343条2項後段により「現に所有している者」が納税義務者になります 現所有者の申告(384条の3。条例による)が必要になります

「亡くなった年の分」と「翌年以降の分」は、性質が違います

ここは、多くの方が混同されるところです。亡くなった年の途中で発生した納税義務は、被相続人の債務を相続人が引き継いだものです。これに対し、翌年以降の固定資産税は、その年の1月1日に不動産を持っている相続人自身の税金であって、被相続人の債務ではありません。この違いは、後述の相続税の債務控除の場面で効いてきます。

税率・免税点など、基本の数字

あわせて、基本となる数字も確認しておきましょう。いずれも地方税法に定めがありますが、実際の税率は各市区町村の条例で定められます。

項目内容根拠
固定資産税の標準税率1.4%(標準税率であり、条例でこれと異なる税率を定めることもできます)地方税法350条
都市計画税の制限税率0.3%(市街化区域内の土地・家屋に課される。課さない市区町村もあります)地方税法702条の4
免税点同一市区町村内の課税標準額の合計が、土地30万円・家屋20万円・償却資産150万円に満たない場合は、原則として課税されません(財政上その他特別の必要がある場合には、条例の定めるところにより免税点未満でも課税されることがあります地方税法351条
[免税点は「市区町村ごと・区分ごと」の合計で判定されます]
免税点は、同一の市区町村内にある、同じ区分(土地/家屋/償却資産)の課税標準額の合計で判定されます。一筆ごと・一棟ごとではありません。ですから、「価値の低い山林を一筆だけ持っていたので課税されていなかったが、相続で別の土地と合算されて課税されるようになった」ということも起こり得ます。詳しい取り扱いは、その不動産の所在する市区町村にご確認ください。

納税義務は相続人に引き継がれる――地方税法9条と「相続人代表者指定(届出)書」

さて、本題です。亡くなった方に課された固定資産税は、どうなるのか。

地方税法9条――納税義務の承継

地方税法9条1項は、相続があった場合、相続人は被相続人に課されるべき、または被相続人が納付すべき地方団体の徴収金を納付しなければならない旨を定めています。要するに、税金の支払義務も相続の対象になるということです。

相続人が複数いる場合の負担については、同条に続けて定めがあります。各相続人は、被相続人の徴収金を民法900条から902条までの規定による相続分によりあん分して計算した額を納付しなければならないとされ、さらに、相続によって得た財産の価額を限度として、互いに連帯納付の責任を負うという構造になっています。国税における国税通則法5条と、同じ考え方です。

相続放棄をすれば、この承継も生じません

相続を放棄した方は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。したがって、被相続人の固定資産税を承継することもありません。ただし注意していただきたいのは、「亡くなった方あての納税通知書が届いたので、とりあえず自分のお金で払っておいた」という行為です。これが相続財産の処分(民法921条1号)にあたると評価されると、単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。借金の有無がはっきりしないうちは、支払う前に必ず専門家にご相談ください。詳しくは相続放棄および法定単純承認の記事をご覧ください。

「相続人代表者指定(届出)書」――通知を誰に送るかを決める書類

相続人が3人いるとして、市区町村は3通の納税通知書を送るのでしょうか。実務では、そうしていません。地方税法9条の2は、被相続人の地方団体の徴収金の賦課徴収や還付に関する書類を受け取るための代表者を、相続人の中から指定して市町村長に届け出ることができる旨を定めています。この届出に使うのが、「相続人代表者指定(届出)書」です。名称は市区町村により多少異なります。

  1. 届け出るのは「受け取る人」であって「払う人」ではありません相続人代表者は、あくまで納税通知書などの書類を受領する窓口です。代表者になったからといって、その方が全額を負担すると法的に決まるわけではありません。ここは誤解が非常に多いところです。
  2. 誰を代表者にするか一般には、その不動産を取得する見込みの方や、市区町村の近くにお住まいの方が選ばれます。話し合いで決めていただいて構いません。
  3. 届け出ないとどうなるか届出がない場合、市町村長が相続人のうちの一人を指定することができるとされています。つまり、こちらから決めなければ、行政の側で決められることになります。意向があるなら、早めに届け出るほうがよいでしょう。
  4. 提出先と様式提出先はその不動産の所在する市区町村(東京23区は都税事務所)です。様式・添付書類(戸籍等)は自治体により異なりますので、必ずその市区町村のホームページまたは窓口でご確認ください。

口座振替は、そのままでは続きません

これも実務でよくつまずく点です。被相続人の預金口座は、金融機関が死亡を把握した時点で凍結されます。固定資産税を口座振替にされていた場合、その口座からの引落しはできなくなります。「引き落とされているはずだから大丈夫」と思い込んでいると、気づかないうちに滞納となり、延滞金が加算されていたということが起こります。納付書での支払いに切り替えるか、相続人の口座で新たに口座振替を設定してください。

相続登記が終わらないまま年を越したら――「現に所有している者」と現所有者申告(384条の3)

相続の手続きは、そう簡単には終わりません。遺産分割の話し合いが長引き、相続登記をしないまま1月1日を迎えてしまう――これは、よくあることです。このとき、課税はどうなるのでしょうか。

343条2項後段――「現に所有している者」

地方税法343条2項は、原則として登記名義人を所有者としつつ、その登記名義人である個人が賦課期日前に死亡している場合には、賦課期日において当該土地または家屋を現に所有している者をもって所有者とする旨を定めています。

相続の場面でこの「現に所有している者」にあたるのは、通常、その不動産を相続した相続人です。遺産分割がまだ済んでいなければ、相続人が共同で相続財産を承継している状態ですので、実務上は相続人の方々が該当することになります。具体的な取り扱いは市区町村により運用の幅がありますので、個別には課税担当課にご確認ください。

1月1日(賦課期日) 翌年1月1日(賦課期日) この期間に死亡した場合 その年度は被相続人が納税義務者→9条で承継 翌年度からは 「現に所有している者」 前年度
賦課期日(1月1日)と死亡時期の関係。日割りはされず、その日の所有者に1年分が課されます

2020年度に新設された「現所有者の申告制度」(384条の3)

所有者不明土地の問題を背景に、市区町村が現所有者を早期に把握できるようにするため、地方税法384条の3が設けられました。令和2年度(2020年度)の地方税法改正により創設された制度です。

現所有者は、条例の定めるところにより
市区町村へ申告しなければならない
地方税法384条の3。申告期限は「現所有者であることを知った日の翌日から3か月を経過した日以後の日」として条例で定められます

「相続登記の義務化」と、混同なさらないでください

2024年4月1日から、不動産登記法76条の2により相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しなければ、10万円以下の過料の対象となり得ることになりました。これは法務局(登記)の話です。一方、本章でご説明した現所有者の申告は、市区町村(課税)の話です。宛先も、根拠法も、期限も違います。相続登記の義務化については相続登記の義務化の記事で詳しく解説しています。

ご相談事例

※ 以下は、実際のご相談を踏まえて構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「引き落とされていると思っていたら、督促状が来ました」

ご相談にいらしたのは、前の年の秋にお母さまを亡くされた60代のご長女でした。お母さまは地方の実家に一人でお住まいで、ご長女は都市部にお住まい。ご相談のきっかけは、実家に送られていた郵便物を転送で受け取ったところ、市役所からの督促状が入っていたことでした。

お話をうかがうと、事情はこうでした。固定資産税は、お母さまの預金口座から口座振替で引き落とされていました。ご長女は、「税金のことは、これまでどおり自動で引かれているものと思っていました」と仰います。ところが、金融機関にお母さまの死亡を届け出た時点で口座は凍結され、以後の引落しは不能になっていたのです。納期限が過ぎ、督促、そして延滞金――という順に進んでいました。

さらに、もうひとつ問題がありました。お母さまが亡くなられたのは秋、つまり1月1日より前でした。したがって、年が明けた翌年度分については、賦課期日にすでに登記名義人が亡くなっている状態です。343条2項の「現に所有している者」が納税義務者となり、市区町村への現所有者の申告も必要な状況でした。ご長女は、「相続登記をこれからやるつもりでしたので、市役所への届出が別にあるとは思ってもみませんでした」と驚かれていました。

私たちがお手伝いしたのは、次の三つです。第一に、市区町村の課税担当課へ連絡し、相続人代表者指定(届出)書と現所有者の申告を提出したこと。第二に、延滞となっていた分を納付書で納め、以後の納付方法を整理したこと。第三に、遺産分割の話し合いと相続登記の準備を並行して進めたことです。

この事案で申し上げたいのは、ひとつです。「これまでどおり自動で処理されているはず」という思い込みが、いちばん危ないということです。口座振替、公共料金、保険料――被相続人名義で自動化されていたものは、死亡を境にすべて止まります。止まったことに気づけるかどうかが、分かれ目になります。

未登記家屋という盲点――登記のない建物の名義はどう変えるのか

ここからは、地方の実家の相続で驚くほど頻繁に出てくる論点です。「建物の登記が、そもそも存在しない」というケースです。

なぜ登記のない建物があるのか

建物を新築したときには本来、表題登記を申請しなければならないのですが、現金で建てた古い家屋、増築部分、農作業小屋、車庫など、登記されないまま固定資産税だけが課されている建物は、決してめずらしくありません。金融機関からの借入れがなければ、登記をする実務上の必要に迫られなかったためです。

 登記のある家屋未登記家屋
市区町村が把握する場所 登記簿の情報が市区町村へ通知される 家屋補充課税台帳に登録されている
名義の変え方 法務局へ相続登記を申請する 市区町村へ「未登記家屋所有者変更届」等を提出する(名称は自治体により異なります)
放置したときの困りごと 相続登記の義務違反(過料)のおそれ、売却・担保設定ができない 売却・担保設定が難しい。次の相続でさらに権利関係が複雑になる
[届出は「課税上の名義」を変えるものです]
未登記家屋所有者変更届は、市区町村が課税のために管理している台帳上の所有者を変更する手続きです。これによって、登記があるのと同じ対抗力が得られるわけではありません。将来の売却や担保設定を考えるのであれば、表題登記を行ったうえで所有権保存登記をするという道を検討する必要があり、これは土地家屋調査士・司法書士の領域になります。手続きの要否と手順は、必ず専門家にご相談ください。

遺産分割協議書には、未登記家屋も書いておく

実務上の助言をひとつ。遺産分割協議書を作成する際、未登記家屋も必ず記載してください。登記簿がありませんので、固定資産税の課税明細書や名寄帳の記載(所在・家屋番号のない建物であれば所在地番・種類・構造・床面積など)を引き写して特定します。「登記がないから、書きようがない」と省いてしまうと、後日その建物だけ分割の対象から漏れていたことになり、あらためて協議のやり直しが必要になります。遺産分割協議書の書き方については遺産分割協議書の記事をご覧ください。

住宅用地特例が外れる怖さ――空き家の放置と2023年の「管理不全空家等」

この章は、相続した実家を空き家のまま持ち続けている方に、特にお読みいただきたいところです。

住宅用地特例とは(地方税法349条の3の2)

住宅の敷地として使われている土地については、固定資産税の課税標準が大きく引き下げられる特例が設けられています。

区分面積固定資産税の課税標準都市計画税の課税標準
小規模住宅用地 住宅用地のうち200㎡以下の部分 価格の6分の1 価格の3分の1
一般住宅用地 住宅用地のうち200㎡を超える部分 価格の3分の1 価格の3分の2

根拠は、固定資産税が地方税法349条の3の2、都市計画税が同702条の3です。なお、特例の対象となる「住宅用地」の面積そのものに、家屋の床面積の10倍までという上限が設けられています(地方税法施行令52条の11)。これは小規模住宅用地・一般住宅用地の区分にかかわらず、住宅用地全体の面積を算定する際の上限ですので、広い敷地の場合は注意が必要です。

建物を壊すと、特例は外れます

この特例は「住宅の敷地であること」に着目したものです。したがって、老朽化した実家を解体して更地にすると、翌年度からこの特例が適用されなくなります。「危ないから壊しておこう」という善意の行動が、翌年の納税通知書で思いがけない金額となって返ってくる――これは、当センターでも実際にご相談を受ける場面です。

「更地にすると税金が6倍」は、正確な言い方ではありません

よく「更地にすると固定資産税が6倍になる」と言われますが、これはやや大づかみな表現です。課税標準が6分の1から1になるのは事実ですが、実際の税額は、宅地等に係る負担調整措置や、家屋がなくなることによる家屋分の税額の減少などの影響を受けます。また、解体後の土地の利用方法によっても変わります。したがって「必ず6倍になる」と考えるのは正確ではありません。解体をご検討の際は、事前にその市区町村の課税担当課に、解体後の見込み税額を照会することを強くお勧めします。

もうひとつの経路――勧告を受けると特例が外れます

建物を壊していなくても、住宅用地特例が外れる場合があります。空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)に基づく手続きです。

[まず来るのは「助言・指導」です]
いきなり勧告が出されるわけではありません。一般に、助言・指導があり、それでも改善されない場合に勧告へ進むという順序が取られます。市区町村から連絡があった段階で、放置せずに対応することが何より大切です。実家をどうするかの判断そのものについては実家・空き家を相続したらどうするの記事で、手放す選択肢については相続土地国庫帰属制度の記事で詳しく整理しています。

相続税との関係――未払いの固定資産税は債務控除できるのか

最後に、相続税の申告が必要な方に向けた論点を二つ整理します。

債務控除――「亡くなった時点で確定していたか」で判断します

相続税の計算では、被相続人の債務で相続開始の際に現に存するものを、遺産総額から差し引くことができます(相続税法13条・14条)。固定資産税については、賦課期日である1月1日に納税義務が成立していると考えられますので、その年度分のうち、亡くなった時点でまだ納付していなかった金額は、原則として債務控除の対象になります。

ケース債務控除の可否(原則的な考え方)
3月に死亡。その年度分は全額未納 未納分は債務控除の対象と考えられます。賦課期日(1月1日)に納税義務は成立しているためです
9月に死亡。年4回のうち2回分を納付済み 納付済みの分は控除できず、残っている未納分が対象と考えられます
11月に死亡。翌年度分 対象になりません。翌年度分は翌年1月1日の所有者(=相続人)の税金であり、被相続人の債務ではないためです

葬儀費用や他の債務を含めた債務控除の全体像については、葬儀費用は相続財産から引ける?の記事で詳しく整理しています。個別の判定は税理士にご確認ください。

固定資産税評価額と相続税評価額は、別物です

もう一点、混同の多いところを整理します。納税通知書に書かれている「価格(評価額)」は、固定資産税のための評価額であって、相続税の申告に使う評価額とは異なります。

 固定資産税評価額相続税の評価
土地 固定資産評価基準に基づき市区町村が決定(3年ごとの評価替え) 路線価方式または倍率方式により評価します。倍率方式の場合は固定資産税評価額に倍率を乗じて計算します
家屋 同上 財産評価基本通達89により、固定資産税評価額に基づいて評価されます(倍率は1.0)

つまり家屋については固定資産税評価額がそのまま使われる一方、土地は路線価地域では別の評価方法によるということです。「納税通知書の金額を合計すれば相続税の財産額になる」わけではありません。財産の評価については相続財産の評価方法の記事をご覧ください。

― 私たちから一言 ―

「納税通知書は、いちばん誠実な財産目録です」

相続のご相談をお受けするとき、私が最初に「お手元にありませんか」とうかがう書類のひとつが、固定資産税の納税通知書です。理由は単純で、これほど正直に、その方の不動産を教えてくれる紙はないからです。

通帳は解約されているかもしれません。権利証は、どこにしまわれたか分からないかもしれません。それでも、固定資産税の納税通知書だけは、毎年決まった時期に、市区町村から届き続けます。課税明細書には、ご家族が存在すら知らなかった土地が、しれっと一行加わっていることがあります。裏の細長い私道、集落の共有地、遠い田畑。「父が、こんな土地を持っていたとは知りませんでした」――このお言葉を、私たちは何度もうかがってまいりました。

そして、この紙にはもうひとつの顔があります。放っておくと、静かに問題が育っていくという顔です。口座振替が止まったことに気づかず延滞金が積み上がる。相続登記も現所有者の申告もしないまま年を越し、翌年も同じ通知が同じ宛名で届く。そうして十年が経つと、相続人はさらに次の世代へ広がり、話し合うべき相手が二十人になっている――そういう事案を、私たちは実際に扱っております。所有者不明土地の問題は、こうして生まれるのです。

ですから、お願いがございます。亡くなった方あての納税通知書が届いたら、それを「面倒な郵便物」ではなく、「最初の一歩を促してくれる合図」だと受け取ってください。やることは、そう多くありません。市区町村へ相続人代表者指定(届出)書を出す。必要なら現所有者の申告をする。そして相続登記の準備を始める。この三つだけです。手続きの宛先が法務局と市区町村に分かれているために「どちらかをやれば済む」と思われがちですが、両方が必要です。当センターでは、司法書士・税理士と連携し、どこに何を出すべきかの交通整理からお手伝いしております。「亡くなった父あてに通知が来たのですが」――そのご相談から、どうぞお気軽にお電話ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

相続不動産の固定資産税でよくある7つの落とし穴

当センターへのご相談の中で見えてきた、相続不動産の固定資産税をめぐるよくある誤解と落とし穴を7つに整理いたしました。

  1. 「本人が亡くなったのだから、課税もなくなる」と思っている なくなりません。納付の義務は地方税法9条により相続人へ承継されます。また、年の途中の死亡でも日割りはされず、賦課期日(1月1日)の所有者に1年分が課されています。
  2. 口座振替が続いているものと思い込み、滞納になっている 被相続人の口座は死亡により凍結され、引落しは不能になります。気づかないうちに納期限を過ぎ、延滞金が加算されていたという事例が実際にあります。納付方法の切替えを早めに行ってください。
  3. 相続人代表者になると、自分が全額負担すると思っている 相続人代表者は、納税通知書などの書類を受け取る窓口です(地方税法9条の2)。誰がいくら負担するかを決める制度ではありません。届出をしないでいると、市町村長の側で指定されることがあります。
  4. 相続登記をすれば、市区町村への届出も済んだと思っている 別の手続きです。相続登記は法務局、現所有者の申告(384条の3)や相続人代表者の届出は市区町村です。どちらか一方では足りません。
  5. 未登記家屋の存在に気づかず、遺産分割協議書から漏れている 登記のない建物は家屋補充課税台帳で管理され、名義変更は市区町村への届出で行います。協議書に書き漏らすと、後日あらためて協議が必要になります。課税明細書と名寄帳で必ず突き合わせてください。
  6. 「危ないから」と実家を解体し、翌年の税額に驚く 建物を除却すると、翌年度から住宅用地特例(地方税法349条の3の2)が適用されなくなります。ただし「必ず6倍になる」わけではなく、負担調整措置や家屋分の減少の影響を受けます。解体前に、市区町村へ見込み税額を照会してください。
  7. 空き家を放置し、勧告により特例が外れる 特定空家等に加え、2023年の法改正(令和5年12月13日施行)で新設された「管理不全空家等」についても、勧告を受けると住宅用地特例の対象から除外されます。市区町村から助言・指導の連絡があった段階で、必ず対応してください。

この記事のまとめ

  • 固定資産税の賦課期日は毎年1月1日(地方税法359条)で、その日の所有者に1年分が課される。年の途中で所有者が亡くなっても、日割りはされない。
  • 納税義務者は、原則として登記簿または補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者(地方税法343条2項)。この台帳課税主義があるため、相続登記をしないままだと被相続人名義で課税が続く。
  • 被相続人に課された固定資産税の納付義務は相続人に承継される(地方税法9条)。相続人が複数のときは相続分によりあん分して負担し、相続によって得た財産の価額を限度に連帯納付の責任を負う構造になっている。
  • 相続放棄をすれば承継しない(民法939条)。ただし、亡くなった方の税金を相続人の資金で支払う行為が民法921条1号の法定単純承認と評価されるおそれがあるため、放棄を検討中は支払う前に専門家へ相談する。
  • 納税通知書などの受取窓口を決める書類が「相続人代表者指定(届出)書」(地方税法9条の2)。代表者=全額負担者ではない。届出がなければ市町村長が指定できる。
  • 賦課期日前に登記名義人が死亡していた場合は、343条2項後段により「現に所有している者」が納税義務者となる。あわせて2020年度改正で新設された現所有者の申告(地方税法384条の3)が、条例の定めるところにより必要となる。申告義務違反には過料の定めがある。
  • 現所有者の申告(市区町村)と相続登記(法務局)は別の手続きであり、一方をしても他方をしたことにはならない。相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内・10万円以下の過料の対象となり得る。
  • 未登記家屋は家屋補充課税台帳で管理され、名義変更は市区町村への「未登記家屋所有者変更届」等で行う(名称・様式は自治体により異なる)。登記と同じ効果が得られるわけではなく、売却・担保設定を考えるなら表題登記等の検討が必要。
  • 住宅用地特例により、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税は3分の1一般住宅用地(200㎡超の部分)は固定資産税が3分の1、都市計画税は3分の2となる(地方税法349条の3の2・702条の3)。
  • 建物を解体すると翌年度から住宅用地特例が外れる。ただし「必ず6倍」ではなく、負担調整措置や家屋分の税額減少の影響を受けるため、解体前に市区町村へ見込み税額を照会するのが安全。
  • 特定空家等および2023年改正で新設された管理不全空家等について勧告を受けると、住宅用地特例の対象から除外される。管理不全空家等の制度は令和5年12月13日施行。
  • 基本の数字は、固定資産税の標準税率1.4%(地方税法350条)、都市計画税の制限税率0.3%(同702条の4)、免税点は土地30万円・家屋20万円・償却資産150万円(同351条)。実際の税率は各市区町村の条例による。
  • 死亡時点で未納の固定資産税は、原則として相続税の債務控除の対象と考えられる(相続税法13条・14条)。一方、翌年度分は相続人自身の税金であり、被相続人の債務ではない。
  • 固定資産税評価額と相続税の評価額は別物。家屋は財産評価基本通達89により固定資産税評価額に基づいて評価されるが、土地は路線価方式または倍率方式による。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。固定資産税・都市計画税は市区町村(東京23区は都)が課する地方税であり、税率、現所有者申告の要否・期限・様式、相続人代表者指定(届出)書の名称・添付書類、未登記家屋の届出方法、過料の定めなどは、各自治体の条例および運用によって異なります。必ず対象不動産の所在する市区町村にご確認ください。解体後の見込み税額、住宅用地特例の適用可否、負担調整措置の影響についても、事前に課税担当課へご照会ください。相続税における債務控除の可否および財産評価は個別の判定が必要です。必ず税理士にご確認ください。相続放棄をご検討中の方が被相続人の税金を支払う行為は、法定単純承認と評価されるおそれがありますので、支払う前に弁護士・司法書士にご相談ください。記載した条文番号・施行日は執筆時点で確認したものですが、法令および税制は改正される可能性があります。本記事の内容は2026年8月時点の情報に基づいていますが、実際にお手続き・お申告をされる際は、必ずe-Gov法令検索総務省国税庁法務省および各市区町村の一次情報で最新の内容をご確認のうえ、税理士・弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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