先祖代々の土地を「分けずに」守る
── 生命保険を“代償金”に活用した分割
お父様が遺したのは、田・畑・宅地・建物といった、先祖代々受け継いできた土地でした。末っ子の中村誠さんは、その土地を自分の代で途絶えさせたくない、なんとか守っていきたいと考えていました。けれど、相続人は母・兄・姉・誠さんの4人。「自分が土地を継げば、ほかのきょうだいの取り分が少なくなってしまう」――そこが、いちばんの悩みどころでした。
“分けにくい遺産”という壁
遺産の大半が不動産で、しかもそれが先祖代々の田畑や宅地。これは、相続の中でもとりわけ揉めやすい典型的なケースです。
土地を相続人で細かく分筆してしまえば、一枚一枚が中途半端な大きさになり、管理も活用も難しくなります。かといって、誰か一人がまとめて継げば、その分だけ他のきょうだいの取り分は減ってしまう。「土地はまとめて守りたい。でも、きょうだいの間にわだかまりは残したくない」。この“両立しにくい願い”をどう叶えるかが、ご相談の核心でした。
鍵になった、一枚の生命保険
ヒアリングを重ねる中で、解決の糸口が見えてきました。お父様が遺した財産の中に、誠さんを受取人とする生命保険があったのです。
そこで描いたのが、こんな設計です。先祖代々の不動産は、誠さんがまとめて相続する。その代わりに、誠さんが兄・姉へそれぞれ「代償金」をお支払いする。これを“代償分割”といいます。土地そのものは分けずに守りつつ、お金で公平さを保つ方法です。
そして、その代償金の原資に充てたのが、誠さんが受け取った生命保険金でした。手元の預貯金を取り崩すことなく、保険金という“まとまった現金”を、きょうだいへの精算にそのまま活かせたのです。生前にどんな保険に、誰を受取人にして入っておくか――その一つの判断が、相続の場面でこれほど効いてくる。それを実感する事例でした。
残したのは、土地だけではなく
預貯金については、お母様を中心に、きょうだいで配分。全体のバランスを見ながら、誰か一人だけが損をした、得をしたという感覚が残らないよう、丁寧に調整していきました。
最終的に、合意した内容は遺産分割協議書としてきちんと書面化し、提携の司法書士とともに相続登記まで完了。先祖の土地はまとまったまま、次の世代へと引き継がれることになりました。
物語のその後
「土地のことで、きょうだいの仲が悪くなるのがいちばん怖かった。それが避けられて、本当にほっとしています」と誠さん。守られたのは、先祖代々の土地だけではありません。きょうだいのつながりもまた、しこりを残さずに守られたのです。
当センターの対応
- 分け方の設計──不動産は誠さんが相続。預貯金はお母様と兄・姉・誠さんで配分し、全体の公平感を調整しました。
- 代償分割のご提案──誠さんが兄・姉へ代償金をお支払いする形に。土地を分けずに公平さを保ちました。
- 生命保険を原資に──誠さんが受け取った生命保険金を、代償金の支払い原資として活用しました。
- 書面化と登記──合意内容を遺産分割協議書にまとめ、提携司法書士と相続登記まで対応しました。
「主な遺産が不動産だけ」というもめやすいケースは、代償分割(一人が取得し、他の相続人へお金で精算する方法)で解決できることがあります。その際、生命保険金は代償金の“原資”として非常に有効です。生前の保険の入り方が、将来の相続を円満にすることもあります。遺産分割協議書のページもご参照ください。