遺産分割審判とは――話し合いではなく、裁判官が分け方を決める手続き

遺産の分け方は、まず相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。話し合いがまとまらないとき、または話し合いができないときは、各相続人は、遺産の分割を家庭裁判所に請求することができます(民法907条2項)。家庭裁判所の手続きには、調停と審判の2つがあります。

比較する点遺産分割調停遺産分割審判
性質裁判所で行う話し合い裁判官による判断
結論の決まり方当事者全員が合意したときに成立します合意がなくても、裁判官が分け方を決めます
結論の幅全員が納得すれば、法定相続分と異なる分け方も可能です法律の定める相続分に従って判断されます
不服があるとき合意しなければ成立しません2週間以内に即時抗告ができます

遺産の分割は、家事事件手続法の別表第二(12の項)に掲げられた事項です。別表第二の事件は、当事者の話し合いによる解決が期待される類型で、調停でも審判でも扱うことができます。調停の進め方は、遺産分割調停の記事で整理しています。本記事では、その先の審判に絞ってご説明します。

審判でも、言い分を述べる機会はあります

審判は、訴訟のように公開の法廷で行われるものではありません。家庭裁判所は、別表第二の事件の審判手続では、原則として当事者の陳述を聴かなければならず、当事者の申出があるときは、審問の期日で聴くことになっています(家事事件手続法68条)。裁判所は、提出された書面や資料、調停での経過などを踏まえて判断します。

審判はどう始まるか――調停不成立で「自動的に」移行する(家事事件手続法272条4項)

遺産分割審判は、多くの場合、調停が成立しなかったときに、そのまま始まります。

条文内容
家事事件手続法272条1項調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合などには、調停が成立しないものとして、調停事件を終了させることができる。
同条4項別表第二に掲げる事項についての調停事件が不成立で終了した場合には、調停の申立ての時に、審判の申立てがあったものとみなす。

つまり、あらためて審判の申立書を出したり、手数料を納め直したりしなくても、手続きは審判に進みます。裁判所も、「話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され」ると案内しています。

「調停に出なければ、何も決まらない」わけではありません

相続人のひとりが調停を欠席し続けても、手続きが止まったままになるわけではありません。調停が不成立になれば審判に移り、欠席している相続人がいても、裁判官が分け方を決めます。言い分があるのであれば、手続きに参加して主張し、資料を出すことが大切です。

最初から審判を申し立てることはできるか

法律上は、調停を経ずに審判を申し立てることもできます。ただし、裁判所は、当事者の意見を聴いて、いつでも職権で事件を調停に付することができます(家事事件手続法274条1項)。遺産分割は話し合いによる解決になじむため、まず調停で話し合うことになる例が多いといわれています。

どこの裁判所で行うか

手続き管轄
調停相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項)
審判相続が開始した地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所(同法191条1項)。当事者が合意で定める家庭裁判所でも行うことができます(同法66条1項)。

調停と審判とで管轄の定めが異なるため、調停をした裁判所と、審判の管轄がある裁判所が一致しないことがあります。家庭裁判所は、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、管轄のない事件を自ら処理することもできます(同法9条1項ただし書)。どの裁判所で審判が行われるかは、裁判所の判断によります。

「調停に代わる審判」という終わり方

調停が成立しない場合でも、家庭裁判所は、相当と認めるときは、一切の事情を考慮して、職権で調停に代わる審判をすることができます(家事事件手続法284条1項)。わずかな点で折り合えない場合や、相続人の一部が出席しない場合などに使われることがあります。当事者は、2週間以内に異議を申し立てることができ(同法286条1項・2項、279条2項)、適法な異議があると、この審判は効力を失い(同法286条5項)、通常の審判手続に移ります(同条7項)。

裁判官は何を基準に決めるのか――法定相続分と民法906条

審判について、もっとも誤解が多いのがこの点です。審判になれば、裁判官が事情をくんで、取り分を増やしてくれると期待される方がいらっしゃいますが、そうではありません。

「いくら受け取るか」は、相続分で決まります

各相続人が受け取る割合は、法定相続分(遺言で相続分の指定があるときは指定相続分)を出発点に、特別受益と寄与分による修正を加えた相続分(具体的相続分)によって決まります。裁判官が、同情や印象によって、この割合を自由に動かすことはできません。

「何を受け取るか」は、民法906条で決まります

民法906条は、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してすると定めています。これは、誰がどの財産を取得するかを決めるときの基準です。たとえば、「その家に住み続けている相続人に自宅を」「事業を継いでいる相続人に事業用の資産を」といった判断が、この条文にもとづいて行われます。

決めること基準
各相続人の取り分(割合・金額)法定相続分・指定相続分を、特別受益(民法903条)と寄与分(民法904条の2)で修正した相続分
誰がどの財産を取得するか民法906条の「一切の事情」

寄与分は、主張するだけでは足りません

「親の介護をしてきた」「家業を手伝ってきた」といった事情を寄与分として認めてもらうには、遺産分割とは別に、寄与分を定める処分の申立てが必要です(民法904条の2第2項・第4項、家事事件手続法別表第二の14の項)。この申立てがあると、遺産分割の審判と併合して審理されます(同法192条)。

家庭裁判所は、遺産分割の審判手続の中で、1か月を下らない範囲内で、寄与分の申立てをすべき期間を定めることができ、その期間を過ぎた申立ては却下することができます(同法193条1項・2項)。特別受益と寄与分の考え方は、特別受益と寄与分の記事をご覧ください。

[相続開始から10年を過ぎると]
相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割では、原則として、特別受益と寄与分の規定は適用されません(民法904条の3)。10年を経過する前に家庭裁判所に遺産の分割を請求した場合などは例外です。また、遺産分割の審判の申立ては、相手方が書面を提出するなどした後は、相手方の同意がなければ取り下げることができず(家事事件手続法199条1項が準用する153条)、相続開始から10年を経過した後は、それより前の段階でも相手方の同意が必要になります(同法199条2項)。経過措置がありますので、古い相続については専門家にご確認ください。

財産の評価

不動産や非上場株式など、価額がはっきりしない財産は、いくらと評価するかが取り分に直結します。当事者の間で評価について合意ができればその額により、合意ができない場合は、鑑定が行われることがあります。鑑定の費用は、当事者が負担するのが一般的です。

審判で決める分け方――現物・代償・換価・共有と、裁判所が選ぶ順序

審判で命じられる分け方は、協議や調停と同じく4つです(遺産分割の4つの方法の記事)。審判では、それぞれについて法律上の定めがあります。

方法内容審判での定め
現物分割財産をそのままの形で、各相続人に割り振る遺産分割の基本となる方法です。
代償分割ある相続人が財産を取得し、ほかの相続人に金銭(代償金)を支払う家庭裁判所は、特別の事情があると認めるときは、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができます(家事事件手続法195条)。
換価分割財産を売却し、代金を分ける審判で最終的に換価分割とする場合は、遺産の競売を命じ、その代金を相続分に応じて分けることになります。これとは別に、家庭裁判所は、遺産の分割の審判をするため必要があると認めるときは、審判に先立って、相続人に対し、遺産を競売して換価することを命じることができます。必要があり、かつ相当と認めるときは、相続人の意見を聴いて任意売却による換価を命じることもできますが、相続人の中に競売によるべき旨の意思を表示した人がいるときは、任意売却は命じられません(同法194条1項・2項)。
共有分割財産を相続人の共有とするほかの方法によることが難しい場合の方法と位置づけられています。

実務では、現物分割 → 代償分割 → 換価分割 → 共有分割の順に検討されるのが一般的とされています。共有にしてしまうと、のちに共有物分割という別の手続きが必要になり、紛争の解決が先送りになるためです(不動産の共有相続の記事)。

自宅を取得したいなら、代償金を支払えることを示す

「実家を自分が引き継ぎたい」という希望を審判で認めてもらうには、ほかの相続人に支払う代償金を用意できることが重要になります。支払能力が確認できなければ、裁判所は代償分割を選びにくくなり、競売による換価という結論になることもあります。預貯金の残高証明書や、金融機関の融資の見込みを示す資料などを準備しておくことが大切です。

なお、家庭裁判所は、遺産の分割の審判において、当事者に対し、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができます(家事事件手続法196条)。

審判では決着がつかないこと――遺産の範囲・遺言の有効性などの「前提問題」と、対象にならない財産

遺産分割審判は、「遺産であることがはっきりしている財産を、相続人であることがはっきりしている人の間で、どう分けるか」を決める手続きです。その手前にある争いや、遺産分割の対象にならない財産については、審判では最終的な決着がつきません。

前提問題――審判で判断されても、あとで覆ることがある

前提問題の例最終的に決着をつける手続き
相続人の範囲(養子縁組や婚姻が有効か、など)人事訴訟など
遺言の有効性遺言無効確認の訴え(遺言が無効になるときの記事)
遺産分割協議の有効性(すでに協議は成立しているのではないか)遺産分割協議の無効確認の訴えなど
遺産の範囲(その財産は被相続人のものか、相続人の名義になっている預金は遺産か、など)遺産確認の訴えなど

最高裁判所大法廷は、昭和41年3月2日の決定で、家庭裁判所は、遺産分割の審判の中で、相続権や相続財産の存否といった前提となる法律関係についても審理・判断することができるとしつつ、その判断には既判力が生じないため、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して決着をつけることができ、その結果、判決によって前提となる権利の存在が否定されれば、審判もその限度で効力を失うとの考え方を示しました。

このため、前提問題について深刻な争いがある場合は、先に訴訟で決着をつけてから遺産分割を進めることが多くなります。調停の段階で、裁判所から、いったん申立てを取り下げて訴訟で解決するよう促されることもあります。

遺産分割の対象にならない(なりにくい)財産

財産・争い審判での扱い
預貯金遺産分割の対象になります。最高裁判所大法廷平成28年12月19日決定が、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると判断しました。
亡くなる前後に引き出された預金(使途不明金)原則として、不当利得返還請求などの民事訴訟で解決する問題です。ただし、相続開始後・遺産分割前に処分された財産は、共同相続人全員の同意があれば、遺産として存在するものとみなすことができ、処分をした相続人の同意は不要です(民法906条の2)。使途不明金の記事をご覧ください。
相続開始後の家賃収入最高裁判所平成17年9月8日判決は、相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産から生じた賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、後にされた遺産分割の影響を受けないと判断しました(遺産分割前の家賃の記事)。当事者全員が合意すれば、遺産分割の中で一緒に精算することもあります。
借金などの相続債務金銭債務は、相続開始と同時に、法定相続分に応じて各相続人が承継すると解されており、遺産分割の審判の対象にはなりません。
葬儀費用・遺産の管理費用の精算相続開始後に生じた費用であり、原則として遺産分割とは別の問題です。当事者全員が合意すれば、調停の中で一緒に解決することがあります。
受取人が指定されている生命保険金原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象ではありません。

調停であれば、全員の合意によって、こうした周辺の問題もまとめて解決することができます。審判になると、扱える範囲が狭くなることは、調停で歩み寄るかどうかを考えるうえで、知っておきたい点です。

審判が出るまでの備え――保全処分と預貯金の仮分割(家事事件手続法200条)

調停から審判まで、解決には相応の時間がかかります。その間に財産が散逸したり、当面の生活費や税金の支払いに困ったりしないよう、家事事件手続法は、遺産分割の審判又は調停の申立てがあった場合に使える保全処分を定めています。

条文内容
200条1項
(財産の管理者の選任等)
財産の管理のため必要があるときは、家庭裁判所は、申立てにより又は職権で、財産の管理者を選任し、または事件の関係人に対し、財産の管理に関する事項を指示することができます。
200条2項
(仮差押え・仮処分等)
強制執行を保全し、または事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、家庭裁判所は、当事者の申立てにより、仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命じることができます。
200条3項
(預貯金債権の仮分割)
相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により、遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、家庭裁判所は、申立てにより、特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができます。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りではありません。

家庭裁判所を通さない預貯金の払戻しとの違い

遺産分割前の預貯金については、家庭裁判所の手続きを経ずに、各相続人が単独で一定額の払戻しを受けられる制度もあります(民法909条の2)。こちらは、相続開始時の預貯金額の3分の1に法定相続分を乗じた額で、金融機関ごとの上限額(法務省令で150万円)が定められています。上限を超える金額が必要な場合に、200条3項の仮分割の仮処分が選択肢になります。2つの制度の使い分けは、預貯金の払戻し制度の記事で整理しています。

審判が出たあと――即時抗告は2週間、確定後の登記・預貯金の解約・強制執行

不服があるとき――即時抗告

項目内容
申し立てられる人遺産の分割の審判と、その申立てを却下する審判に対しては、相続人が即時抗告をすることができます(家事事件手続法198条1項1号)。
期間2週間の不変期間内(同法86条1項)。審判の告知を受ける人については、その人が審判の告知を受けた日から進行します(同条2項)。
提出先抗告状は、審判をした家庭裁判所(原裁判所)に提出します(同法87条1項)。審理は高等裁判所で行われます。
寄与分の審判が併合されている場合寄与分を定める処分の審判だけを取り出して、独立して即時抗告をすることはできません(同法198条2項)。

審判は、即時抗告の期間が満了するまでは確定せず、即時抗告をすることができる審判は、確定しなければ効力を生じません(同法74条2項ただし書・4項)。2週間という期間は延ばすことができませんので、審判書を受け取ったら、すぐに内容を確認し、不服がある場合は早めに弁護士へ相談してください。

確定したあとの手続き

  1. 不動産の名義変更(相続登記)相続による所有権移転の登記は、不動産を取得した相続人が単独で申請できます(不動産登記法63条2項)。審判による場合は、審判書の謄本と確定証明書を添付するのが一般的です。相続登記には申請義務と期限がありますので(相続登記の義務化の記事)、確定後は早めに手続きをします。必要書類は法務局または司法書士にご確認ください。
  2. 預貯金・有価証券の手続き審判書の謄本と確定証明書を金融機関に提出して、解約や名義変更をします。求められる書類は金融機関によって異なります。
  3. 代償金などが支払われないとき金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力のある債務名義と同一の効力を有します(家事事件手続法75条)。任意に支払われない場合は、強制執行の申立てができます。家庭裁判所に、義務の履行を勧告してもらう制度もあります(同法289条)。
  4. 相続税の手続き申告期限までに分割がまとまらず、未分割のまま申告していた場合は、分割が決まったあとに、更正の請求や修正申告によって精算します。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用にも、期限と手続きがあります(未分割のまま相続税申告するときの記事)。期限の計算は個別の事情によりますので、税理士にご確認ください。

遺産分割審判でよくある7つの落とし穴

  1. 審判になれば、裁判官が事情をくんで多く分けてくれると期待する 取り分の割合は、相続分(特別受益・寄与分による修正を含む)で決まります。民法906条の「一切の事情」は、誰がどの財産を取得するかの基準です。
  2. 調停を欠席し続ければ、何も決まらないと考える 調停が不成立になれば、自動的に審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、欠席していても分け方が決められます。
  3. 介護の苦労を訴えるだけで、寄与分の申立てをしていない 寄与分は別の申立てが必要で、裁判所が定めた期間を過ぎると却下されることがあります(同法193条)。
  4. 遺産の範囲や遺言の有効性を、審判で最終決着できると考える 前提問題についての審判の判断には既判力がなく、あとから訴訟で覆る可能性があります。争いが深い場合は、先に訴訟で解決します。
  5. 使途不明金や葬儀費用も、審判で一緒に決めてもらえると考える 原則として遺産分割の対象ではありません。調停での合意による解決か、別の訴訟を検討します。
  6. 実家を守りたいのに、代償金の準備をしていない 支払能力を示せなければ、競売で売却して代金を分けるという結論(換価分割)になることがあります。資金の裏づけを用意します。
  7. 審判書を受け取ってから、しばらく放置する 即時抗告は告知を受けた日から2週間です(同法86条)。確定後の登記や税務の手続きにも期限があります。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「調停がまとまりそうにありません。審判になれば、同居して介護した分を認めてもらえますか」――Kさまのご相談

Kさま(60代)は、お母さまと同居し、亡くなるまでの数年間、介護を担ってこられました。遺産は、Kさまが住み続けているご実家と預貯金です。相続人は、Kさまと弟さん、妹さんの3人。調停が始まって1年近くになりますが、弟さんが「実家を売って3等分にすべきだ」と主張して譲らず、話し合いは平行線のままです。Kさまは「審判になれば、裁判官は、介護をしてきた私の事情を考えて、実家を私に残してくれるのではないでしょうか」とお話しになりました。

私からは、「審判では、取り分の割合は法律の定める相続分に従って決まります。介護のご苦労を取り分に反映させるには、『寄与分』を定める申立てが別に必要で、認められるかどうか、認められる場合の額は、資料にもとづいて裁判所が判断します。また、ご実家を取得するには、弟さんと妹さんに代償金を支払えることを示す必要があります。それができないと、競売で売却するという結論になる可能性もあります。調停を担当している弁護士の先生と、寄与分の申立てと、代償金の資金計画について、早めに打ち合わせをなさってください」とお伝えしました。

Kさまは、弁護士と相談して、介護の記録や費用の領収書を整理し、金融機関にも融資の相談をされました。代償金の支払いの見通しを具体的に示したところ、調停の席で弟さんの姿勢にも変化があり、最終的には、Kさまがご実家を取得して代償金を支払う内容で、調停が成立したそうです。Kさまは「審判に任せれば何とかなると思っていましたが、準備をしたことで、話し合いで終えることができました」とおっしゃっていました。

― 私たちから一言 ―

審判を知ることは、話し合いを前に進める力になります

遺産分割の話し合いが長引くと、「もう裁判官に決めてもらいたい」というお気持ちになるのは、無理のないことです。ただ、審判は、どなたかの言い分を全面的に通してくれる手続きではありません。法律の定める相続分に沿って、淡々と分け方が決められます。

だからこそ、審判になった場合にどのような結論が見込まれるのかを知っておくことには、大きな意味があります。見通しが分かれば、どこまで譲り、どこを守るのかを落ち着いて考えられるようになり、調停での歩み寄りにつながることも少なくありません。

私たちは、ご事情を伺いながら論点を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家におつなぎしております。どうぞお気軽にご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 遺産分割審判は、裁判官が分け方を決める手続きです。調停が不成立になると、申立てをし直さなくても審判に移行します(家事事件手続法272条4項)。
  • 取り分の割合は相続分で決まり、誰がどの財産を取得するかは民法906条の「一切の事情」で判断されます。寄与分には別の申立てが必要です。
  • 分け方は、現物・代償・換価・共有の4つです。代償分割は「特別の事情」があるときに認められます(同法195条)。審判に先立って遺産の換価を命ずる裁判についても定めがあります(同法194条)。
  • 遺産の範囲や遺言の有効性などの前提問題は、審判で判断されても既判力がなく、最終的には訴訟で決着をつけます。使途不明金や相続債務などは、原則として審判の対象になりません。
  • 審判までの間は、財産の管理者の選任、仮差押え・仮処分、預貯金の仮分割といった保全処分を利用できます(同法200条)。
  • 不服があるときは、告知を受けた日から2週間以内に即時抗告をします(同法86条・198条)。最新の情報は裁判所・法務省・国税庁等でご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律上・税務上の助言を提供するものではなく、遺産分割審判の結論、寄与分・特別受益の認定、代償分割・換価の可否、即時抗告の結果、相続税の課税関係などを保証するものではありません。審判の内容は、遺産の構成、相続人の状況、提出された資料などによって異なります。裁判例は個別の事案についての判断であり、ほかの事案に当然に当てはまるものではありません。制度は改正されることがありますので、最新の情報は裁判所・法務省・国税庁等でご確認のうえ、具体的な手続きについては、家庭裁判所、または弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。本記事の情報を利用したことによる損害等について、当センターは責任を負いかねます。

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