財産目録とは――「何を・どこに・どれだけ」を一覧にした表です

財産目録とは、ある人の財産と債務を、種類ごとに書き出して一覧にしたものです。不動産、預貯金、株式などのプラスの財産だけでなく、借入金などのマイナスの財産も記載します。

ご本人にとっては当たり前の財産でも、ご家族は意外に把握していないものです。通帳のないネット銀行の口座、昔に買ったままの株式、遠方にある山林や共有持分などは、ご本人が書き残しておかなければ、相続人が見つけるまでに時間がかかり、見つからないままになることもあります。

財産目録を作っておくと、次のような場面で役に立ちます。

[財産目録そのものに、財産を渡す効力はありません]
財産目録は、財産の所在を示す一覧表です。目録に「長男へ」などと書き添えても、それだけでは遺言としての効力は生じないと考えられます。だれに何を渡すかを決めるには、民法の定める方式に従った遺言が必要です。遺言の種類については、公正証書遺言と自筆証書遺言の違いの記事をご覧ください。

財産目録が登場する場面――終活、遺言、相続手続きで役割が異なります

「財産目録」という言葉は、いくつかの場面で使われます。だれが、何のために作るのかによって、守るべきルールが変わります。

場面作る人ルール・根拠
終活として作るご本人法律上の義務や決まった書式はありません。分かりやすさを優先して自由に作れます。
自筆証書遺言に添付する遺言をする方目録は自書でなくてもかまいませんが、すべてのページに署名と押印が必要です(民法968条2項)。
遺言を執行する遺言執行者遅滞なく相続財産の目録を作成し、相続人に交付しなければなりません(民法1011条1項)。
限定承認をする相続人相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述します(民法924条)。
遺産分割・相続税の申告相続人遺産分割協議書に目録を付けることがあります。相続税の申告書には、財産と債務の明細を記載します。
後見人に就任する後見人遅滞なく財産の調査に着手し、1か月以内に調査を終えて目録を作成します(現行の民法853条1項)。

この記事では、まずご本人が元気なうちに作る財産目録を中心にご説明し、そのあとで、遺言に添付する場合と、相続が始まったあとの財産目録を取り上げます。

書いておく項目――プラスの財産、マイナスの財産、気づかれにくい財産

財産目録は、ほかの人が読んで、その財産にたどり着けるように書くことが大切です。財産の種類ごとに、次の項目を書いておきます。

種類書いておく項目書くときの注意
土地所在、地番、地目、地積、持分住所(住居表示)ではなく、登記事項証明書に記載された所在と地番で書きます。
建物所在、家屋番号、種類、構造、床面積、持分登記されていない建物がある場合は、その旨を書いておきます。
預貯金金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号残高は日々変わります。口座を特定する情報を中心に書き、残高は「いつ時点か」を添えます。
有価証券証券会社名、支店名、口座番号、銘柄証券会社を通さずに保有している株式があれば、会社名と株数を書きます。
生命保険など保険会社名、証券番号、契約者、被保険者、受取人受取人が指定されている死亡保険金は、遺産分割の対象とは別に扱われるのが一般的です。受取人が現在の状況に合っているかも確認します。
その他の財産自動車(登録番号)、貴金属、貸付金、ゴルフ会員権、貸金庫の有無貸金庫は、金融機関名と支店名を書いておきます。
債務借入先、借入れの内容、おおよその残高、保証人になっている契約他人の借入れの保証人になっている場合は、忘れずに書いておきます。

気づかれにくい財産こそ、書いておきます

暗証番号やパスワードは、財産目録に書き込まないでください

財産目録は、ご家族や専門家に見せることを前提にした書類です。キャッシュカードの暗証番号、インターネットバンキングのパスワードなどを書き込むと、紛失や盗難のときに被害が生じるおそれがあります。目録には財産の所在だけを書き、認証に関する情報は別に管理します。

資料の集め方――ご本人が作るなら、手元の書類から始められます

相続人が亡くなった方の財産を調べるのは大変な作業ですが、ご本人が作る場合は、手元の書類を見ながら書き出していくことができます。

財産手がかりになる資料
不動産固定資産税の納税通知書(課税明細書)、登記事項証明書、権利証(登記識別情報通知)、市区町村の名寄帳、法務局の所有不動産記録証明書
預貯金通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物やメール
有価証券証券会社の取引残高報告書、配当金の通知、証券保管振替機構への開示請求
生命保険など保険証券、保険会社から毎年届く契約内容のお知らせ
債務返済予定表、契約書、信用情報機関への本人開示

不動産――所有不動産記録証明制度が始まっています

2026年(令和8年)2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まっています。自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産を、登記官が一覧にして証明する制度です(不動産登記法119条の2第1項)。相続人などの一般承継人も、亡くなった方について請求することができます(同条2項)。

ただし、法務省は、この制度について、請求する方が指定した検索条件(氏名・住所など)にもとづいて検索した結果を一覧にするものであり、検索条件と異なる氏名・住所で登記されている不動産は一覧に載らないと説明しています。引っ越しや結婚の前の住所・氏名のままになっている不動産は、漏れることがあります。納税通知書や名寄帳とあわせて確認します。

株式――口座のある証券会社が分からないとき

どの証券会社に口座があるか分からなくなった場合は、証券保管振替機構に「登録済加入者情報の開示請求」をすると、口座が開設されている証券会社などを確認できます。

債務――信用情報機関への本人開示

ご自身の借入れやクレジットの契約は、信用情報機関(株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構、全国銀行個人信用情報センター)に本人開示を請求して確認することができます。個人どうしの貸し借りや、保証人になっている契約の一部は、信用情報には載りませんので、契約書などで確認します。

相続が始まったあとに相続人が調べる方法(残高証明書の請求、生命保険契約照会制度など)は、相続財産の調べ方の記事で説明しています。

自筆証書遺言に財産目録を添付するときのルール――パソコンで作れますが、全ページに署名と押印が必要です

目録は、自書でなくてもかまいません(民法968条2項)

自筆証書遺言は、遺言をする方が、全文、日付、氏名を自書し、押印して作成します(民法968条1項)。ただし、遺言書に相続財産の目録を添付する場合、その目録については、自書する必要がありません(同条2項)。この取扱いは、2019年(平成31年)1月13日から始まっています。

法務省の説明によれば、目録の形式には、署名押印のほかに特段の定めはありません。次のような方法で作成できます。

すべてのページに、署名と押印をします

自書によらない目録を添付する場合は、目録の毎葉(1枚ごと)に署名し、押印しなければなりません。自書によらない記載が用紙の両面にある場合は、両面それぞれに署名と押印が必要です(民法968条2項)。

部分書き方署名・押印
遺言書の本文全文・日付・氏名を自書します。パソコンでは作成できません。氏名を自書し、押印します。
財産目録パソコンでの作成、登記事項証明書や通帳の写しの添付ができます。すべてのページに署名し、押印します(両面に記載があれば両面に)。

本文には、たとえば「別紙財産目録1記載の不動産を、長男○○に相続させる」というように、目録の番号を引用して書きます。だれに何を渡すかという内容は、本文に自書します。目録の訂正にも、決められた方式があります(民法968条3項)。訂正が必要になった場合は、目録を作り直すほうが確実です。

法務局に預ける場合の用紙のルール

自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に預ける場合は、民法上の要件に加えて、用紙についてのルールがあります。財産目録も同じです。

保管制度のくわしい内容は、自筆証書遺言書保管制度の記事をご覧ください。

遺言の方式は、法改正が予定されています(押印の見直し・未施行)

2026年(令和8年)6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)により、自筆証書遺言の方式が見直され、改正後の民法968条では、遺言書の本文と財産目録のいずれについても、押印を求める文言が削られています。この部分は、公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日に施行されることとされており、この記事の公開日の時点では、まだ施行されていません。現在作成する遺言書と財産目録には、現行法のとおり押印が必要です。施行日や経過措置など最新の情報は、法務省でご確認ください。

相続が始まったあとの財産目録――遺言執行者・限定承認・遺産分割・相続税の申告

相続が始まったあとにも、財産目録を作る場面があります。ご本人が生前に作った目録があると、これらの作業の出発点になります。

遺言執行者が作る財産目録(民法1011条)

遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません(民法1011条1項)。相続人の請求があるときは、その立会いをもって目録を作成し、または公証人に作成させなければなりません(同条2項)。ご家族が遺言執行者に指定されている場合も、この義務があります。遺言執行者の役割については、遺言執行者の記事をご覧ください。

限定承認をするときの財産目録(民法924条)

限定承認をしようとする相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません(民法924条・915条1項)。相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみすることができます(民法923条)。

限定承認や相続放棄をしたあとであっても、相続財産を隠したり、悪意で相続財産の目録に記載しなかったときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条3号)。目録は、分かっている財産を正確に記載します。くわしくは、限定承認の記事と法定単純承認の記事をご覧ください。

相続するかどうかを決めるための調査

相続人は、相続の承認または放棄をする前に、相続財産の調査をすることができます(民法915条2項)。プラスの財産と債務のどちらが多いかを3か月以内に見きわめるうえで、ご本人が残した財産目録、とくに債務の記載は大きな手がかりになります。

遺産分割と相続税の申告

遺産分割協議書には、分ける財産を特定するために、目録を付けることがあります。相続税の申告が必要な場合は、申告書に財産と債務の明細を記載します。いずれも、財産に漏れがあると、協議や申告のやり直しにつながることがあります。

[後見人が作る財産目録と、制度の見直し]
現行の民法では、後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、1か月以内にその調査を終えて、目録を作成しなければならないとされています(民法853条1項)。成年後見に関する制度は、令和8年法律第45号による見直しが予定されており、この部分は、公布の日から2年6か月を超えない範囲内で政令で定める日に施行されることとされています。施行後は手続きが変わる見込みですので、最新の情報は法務省・家庭裁判所でご確認ください。現行の制度については、成年後見制度の記事をご覧ください。

作ったあとの保管と見直し――置き場所を伝え、年に一度は確かめます

置き場所を、信頼できる方に伝えます

財産目録は、必要なときに見つからなければ役に立ちません。保管場所を、ご家族や、遺言執行者に指定する方など、信頼できる方に伝えておきます。エンディングノートに財産の一覧のページがある場合は、それを財産目録として使うこともできます。エンディングノートについては、エンディングノートの書き方の記事をご覧ください。

年に一度、見直します

財産は変わっていきます。口座を解約した、不動産を売った、保険を見直した、新しく借入れをした、といった変化があったときは、目録を書き直します。誕生日や年の初めなど、時期を決めて年に一度確かめると、続けやすくなります。目録には作成した日付を書いておきます。

遺言を書いたあとに財産が変わったとき

遺言を書いたあとに、遺言に書いた財産を売却するなど、遺言の内容と抵触する処分をしたときは、その抵触する部分について、遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条2項)。たとえば、「長男に相続させる」と書いた不動産を売却すると、その部分は実現されなくなります。財産が大きく変わったときは、目録だけでなく、遺言の内容も見直す必要があるかを確かめます。遺言の撤回と書き直しについては、遺言書の撤回・書き直しの記事をご覧ください。

作成の手順

  1. 資料を集めます固定資産税の納税通知書、通帳、証券会社の報告書、保険証券、返済予定表を、ひとまとめにします。
  2. 種類ごとに書き出します不動産、預貯金、有価証券、保険、その他の財産、債務の順に、所在が分かるように書きます。
  3. 気づかれにくい財産を確かめますネット上の口座、遠方の不動産、共有持分、保証人になっている契約を確認します。
  4. 作成日を書き、保管します作成した日付を記載し、置き場所を信頼できる方に伝えます。
  5. 遺言に添付する場合は、方式を確かめますすべてのページに署名と押印をし、本文で目録を引用します。
  6. 年に一度、見直します財産が変わったら書き直し、遺言の内容と合っているかも確かめます。

財産目録でよくある7つの落とし穴

  1. 目録を作っただけで、だれに渡すかを決めたつもりになる 財産目録は一覧表であり、それだけでは遺言としての効力は生じないと考えられます。渡す相手を決めるには、遺言が必要です。
  2. 遺言に添付する目録に、署名・押印をしていないページがある 自書によらない目録は、すべてのページに署名と押印が必要です。両面に記載があれば、両面に必要です(民法968条2項)。
  3. 不動産を、住所(住居表示)で書く 不動産は、登記事項証明書の所在・地番・家屋番号で特定します。住所と地番は一致しないことがあります。
  4. 借入金や保証人になっている契約を書かない 債務の記載がないと、相続人が3か月以内に相続するかどうかを判断するときに、手がかりがなくなります。
  5. 暗証番号やパスワードまで書き込む 目録には財産の所在だけを書きます。認証に関する情報は、別に管理します。
  6. 作ったきりで、見直さない 古い目録は、かえって相続人を迷わせます。作成日を書き、年に一度は確かめます。
  7. 置き場所を、だれも知らない 見つからなければ、役に立ちません。保管場所を、信頼できる方に伝えておきます。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「パソコンで作った一覧表を、そのまま遺言に付けてよいのでしょうか」――Kさまのご相談

Kさま(70代)は、ご自宅のほかに、ご実家から引き継いだ土地と、複数の金融機関の口座をお持ちでした。自筆で遺言を書こうと考え、パソコンで財産の一覧表を作られたところでした。Kさまは「不動産が何筆もあって、手で書き写すと間違えそうです。この一覧表を印刷して、遺言に付けてもよいのでしょうか。それから、昔の住所のままになっている土地があるかもしれません」とお話しになりました。

私からは、「遺言書に添付する財産目録は、パソコンで作成したものでもかまいません。登記事項証明書や通帳の写しを目録として添付することもできます。ただし、目録のすべてのページに、Kさまの署名と押印が必要です。両面に印刷した場合は、両面に必要になります。だれに何を渡すかという内容は、本文にご自身の手で書いていただきます。不動産については、固定資産税の納税通知書と名寄帳で確認し、あわせて法務局の所有不動産記録証明書を請求する方法があります。ただ、この証明書は、検索条件と異なる住所や氏名で登記されている不動産は載りませんので、以前の住所でも検索を依頼することをご検討ください。遺言の文案については、司法書士や弁護士にご確認いただくと安心です」とお伝えしました。

Kさまは、納税通知書に載っていなかった私道の持分があることに気づかれ、目録に書き加えられたそうです。その後、専門家に文案を確認してもらい、目録の各ページに署名と押印をして、法務局の保管制度を利用されました。Kさまは「一覧にしてみて、自分でも忘れていた財産があると分かりました。子どもたちに探させずに済みそうです」とおっしゃっていました。

― 私たちから一言 ―

財産目録は、ご家族への「地図」になります

相続のご相談では、「何がどこにあるのか分からない」というところから始まることが少なくありません。通帳のない口座、遠方の土地、保証人になっていた契約などは、ご本人にしか分からないことが多いものです。財産目録は、ご家族が迷わずに手続きを進めるための、地図のような役割を果たします。

完璧なものを一度に作ろうとすると、手が止まってしまいます。まずは、手元の納税通知書と通帳から、分かるものを書き出すところから始めてみてください。書き出してみると、遺言が必要かどうか、生前に整理しておくものがあるかどうかも、見えてきます。

私たちは、ご事情を伺いながら、財産の整理のしかたを一緒に考え、遺言の作成や相続税の試算が必要な場合には、弁護士・司法書士・税理士などの専門家におつなぎしております。どうぞお気軽にご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 財産目録は、財産と債務を一覧にした表です。終活として作る場合に決まった書式はありませんが、目録だけでは遺言としての効力は生じないと考えられます。
  • 不動産は所在・地番・家屋番号、預貯金は金融機関・支店・口座番号というように、ほかの人がたどり着ける情報を書きます。債務や保証も記載します。
  • 不動産の確認には、納税通知書や名寄帳のほか、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度(不動産登記法119条の2)が使えます。検索条件と異なる氏名・住所の登記は載らない点に注意します。
  • 自筆証書遺言に添付する目録は、パソコンで作成できますが、すべてのページに署名と押印が必要です(民法968条2項)。押印を見直す改正法は公布されていますが、公開日の時点では施行されていません。
  • 相続が始まったあとは、遺言執行者(民法1011条)や、限定承認をする相続人(民法924条)が財産目録を作成します。
  • 目録には作成日を書き、年に一度見直し、置き場所を信頼できる方に伝えます。制度の最新の情報は、法務省・法務局でご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律上・税務上の助言を提供するものではなく、作成した財産目録や遺言書の有効性を保証するものではありません。遺言書の方式に不備があると、遺言の全部または一部が効力を生じないことがあります。遺言の方式や成年後見に関する制度は、令和8年法律第45号による改正が公布されており、施行の時期によって取扱いが変わります。所有不動産記録証明制度や自筆証書遺言書保管制度の手続き・手数料は、変更されることがあります。最新の情報は法務省・法務局・家庭裁判所・国税庁等でご確認のうえ、具体的な作成や手続きについては、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。

相続のお悩み、まずはご相談ください

FREE CONSULTATION

「財産の一覧を作りたいが、何から手をつければよいか分からない」「遺言に財産目録を付けたい」「親の財産を家族が把握できていない」――ご家族だけで抱え込まず、状況を伺いながら一緒に整理しませんか。
ご事情にあわせて論点を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家におつなぎいたします。