小規模企業共済とは――契約者が亡くなると、遺族に「共済金」が支給される
小規模企業共済は、小規模企業共済法にもとづいて中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する共済制度です。常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は原則5人以下)の個人事業主、その共同経営者、会社等の役員が加入でき(同法2条1項)、事業をやめたときや退任したときに、納めた掛金に応じた共済金を受け取ります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金月額 | 1,000円以上7万円以下で、500円きざみ(小規模企業共済法4条2項) |
| 掛金の税務 | 支払った掛金は、その年の所得から控除されます(小規模企業共済等掛金控除。所得税法75条) |
| 亡くなったとき | 掛金納付月数が6か月以上あれば、遺族に共済金が支給されます(小規模企業共済法9条1項) |
| 受取方法 | 契約者の死亡による共済金は一括受取りです(中小機構の案内では、分割受取りの要件に「請求事由が共済契約者の死亡でないこと」があります) |
亡くなった方の立場で、共済金の種類が変わる
中小機構は、支給される金額の区分を「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」と呼んでいます。契約者が亡くなった場合の区分は、亡くなった方の事業上の立場によって違います。
| 亡くなった方の立場 | 共済金の種類 |
|---|---|
| 個人事業主 | 共済金A |
| 個人事業主の共同経営者 | 共済金A |
| 会社等の役員 | 共済金B |
法律上、個人事業主の死亡は「事業の廃止」(小規模企業共済法9条1項1号)、役員の死亡は「死亡により役員でなくなったとき」(同項2号)に当たり、1号の事由による金額は2号・3号の事由による金額以上となるように定められています(同条4項2号)。中小機構が示している例では、掛金月額1万円の場合の基本共済金は次のとおりです。
| 掛金納付年数(掛金合計額) | 共済金A | 共済金B |
|---|---|---|
| 10年(120万円) | 129万600円 | 126万800円 |
| 20年(240万円) | 278万6,400円 | 265万8,800円 |
実際の金額は、掛金月額や納付月数、増額・減額の履歴によって変わり、年度によっては付加共済金が加算されます。正確な金額は、中小機構にご確認ください。
掛金納付月数が6か月未満のときは、共済金は支給されません
共済金A・Bは、掛金納付月数が6か月以上あることが支給の要件です(小規模企業共済法9条1項)。中小機構は、6か月未満の場合は共済金を受け取れず、納付した掛金は掛け捨てになると案内しています。加入して間もなく亡くなった場合は、この点にご注意ください。
誰が受け取るのか――民法の相続人ではなく、小規模企業共済法10条が定める「遺族」
ここがもっとも大切な点です。共済金を受け取る人は、民法の法定相続人の順位ではなく、小規模企業共済法10条が定める遺族の範囲と順位で決まります。中小機構も、この受給権者の範囲と順位は「民法上の相続の一般原則とは異なり、小規模企業共済法に規定されています」と案内しています。
| 順位 | 受け取る人 | 条件 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 配偶者 | 婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった人(内縁)を含みます(10条1項1号) |
| 第2〜第6順位 | 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順 | 亡くなった当時、主として契約者の収入によって生計を維持していた人(同項2号) |
| 第7順位 | そのほかの親族 | 同じく、主として契約者の収入によって生計を維持していた人(同項3号) |
| 第8〜第12順位 | 子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順 | 生計を維持されていなかった人(同項4号) |
| 第13・第14順位 | ひ孫、甥・姪の順 | 第7順位に当たらない人(同項5号) |
請求できるのは、この表のもっとも上位の人だけです。中小機構は、先順位者を越えて請求することはできないと案内しています。同じ順位の人が2人以上いるときは、人数で等分して支給されます(10条3項)。父母については養父母、実父母の順となります(同条2項)。
民法の相続と、どこが違うのか
- 配偶者がいれば、原則として配偶者が全額を受け取る民法では配偶者と子がともに相続人になりますが、共済金は第1順位の配偶者に支給されます。子は、配偶者がいない場合に順位が回ってきます。
- 内縁の配偶者が第1順位に入る内縁の方は民法上の相続人ではありませんが(内縁・事実婚の相続の記事)、共済金については第1順位です。請求の際には、内縁関係を示す書類を求められます。
- 「生計を維持されていたか」で順位が変わるたとえば、独立して別に暮らしている子(第8順位)よりも、契約者の収入で暮らしていた父母(第3順位)が先になります。
- 契約者が受取人を指定するしくみではない生命保険のように受取人を指定する制度ではなく、受け取る人は法律の順位で決まります。遺言や遺産分割協議で、この順位を変えることはできないと考えられます。
遺産分割の対象になるのか――受け取る人の固有の権利と、相続人が受け取る場合
契約者の死亡による共済金は、法律が遺族に直接支給すると定めているものです(小規模企業共済法9条1項)。中小機構も「共済金は相続の対象になりませんが、みなし相続財産として相続税の申告が必要です」と案内しています。
このため、契約者の死亡による共済金は、一般に、亡くなった方の遺産ではなく、受け取る遺族の固有の権利として扱われ、遺産分割協議の対象にはならないと考えられます。この点は、受取人が指定された生命保険金や、遺族に支給される死亡退職金と似ています(死亡退職金と弔慰金の記事)。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 遺産分割 | 共済金は遺産分割の対象にならないと考えられます。ほかの相続人との公平をどう図るかは、ご家族の話し合いや個別の事情によります。 |
| 相続放棄 | 遺族固有の権利であれば、相続放棄をした人でも受け取れると考えられます。ただし、後で見るように相続税の非課税枠は使えません。相続放棄を検討している場合は、受け取る前に専門家にご確認ください(相続放棄の記事)。 |
| 差押え | 共済金等の支給を受ける権利は、原則として譲り渡し、担保に供し、差し押さえることができません(小規模企業共済法15条。国税滞納処分などの例外があります)。 |
「相続人」が受け取る場合もある
一方で、次のような場合は、遺族の順位ではなく相続の問題になります。
- 分割受取りの途中で亡くなった場合生前に共済金を分割で受け取っていた方が亡くなったときは、まだ支給期月が来ていない分割共済金の現価に相当する額が、相続人に一括して支給されます(小規模企業共済法9条の4第1項1号)。こちらは10条の遺族の順位ではなく、相続人が対象です。
- 生前に請求事由が生じていた場合たとえば、廃業して共済金を請求できる状態になった後、請求する前に亡くなった場合は、すでに本人に生じていた権利を相続人が承継することになると考えられます(同法15条ただし書は、権利が相続により承継される場合があることを前提にしています)。
どちらに当たるかで、請求できる人も必要書類も変わります。亡くなった時点の契約の状態を、まず中小機構にご確認ください。
相続税の扱い――「退職手当金等」としてみなし相続財産、非課税枠は500万円×法定相続人の数
契約者の死亡により遺族が受け取る共済金は、相続税の計算では、会社から支給される死亡退職金と同じ「退職手当金等」として扱われます。
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 相続税法3条1項2号 | 被相続人に支給されるべきであった退職手当金等(政令で定める給付を含む)で、死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされます。 |
| 相続税法施行令1条の3第10号 | 「政令で定める給付」に、中小機構の締結した小規模企業共済法の共済契約にもとづいて支給を受ける一時金が含まれます。 |
| 相続税法12条1項7号 | 相続人が取得した退職手当金等は、500万円×法定相続人の数まで非課税です。 |
非課税枠の計算
国税庁によれば、すべての相続人が取得した退職手当金等の合計額が非課税限度額以下であれば課税されず、超える場合は、その超える部分が相続税の課税対象になります(タックスアンサーNo.4117)。
| 設例 | 計算 |
|---|---|
| 前提 | 個人事業主の夫が死亡。法定相続人は妻と子2人の3人。妻が共済金1,800万円を受け取った。ほかに退職手当金等はない。 |
| ① 非課税限度額 | 500万円 × 3人 = 1,500万円 |
| ② 課税価格に算入される金額 | 1,800万円 − 1,500万円 = 300万円 |
法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます。養子がいる場合に数に含められる人数には制限があります(タックスアンサーNo.4117)。
注意したい3つの点
- 会社からの死亡退職金とは「同じ枠」、生命保険金とは「別の枠」会社の役員だった方が亡くなり、会社から死亡退職金も支給される場合は、共済金と死亡退職金を合計して、一つの非課税枠(500万円×法定相続人の数)を使います。一方、生命保険金の非課税枠(相続税法12条1項6号)は、これとは別に使えます(生命保険を使った相続対策の記事)。
- 相続人以外の人が受け取ると、非課税枠は使えない非課税の対象は「相続人の取得した」退職手当金等です。相続税法上の相続人には、相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません(同法3条1項)。したがって、内縁の配偶者や相続放棄をした人が受け取った共済金には、非課税枠が適用されません。
- 2割加算の対象になることがある共済金を受け取った人が、亡くなった方の一親等の血族(代襲相続人となった孫などを含みます)および配偶者以外の人である場合は、その人の相続税額に2割が加算されます(相続税法18条)。内縁の配偶者や兄弟姉妹が受け取る場合が、これに当たります(相続税の2割加算の記事)。
なお、相続税法の規定により相続・遺贈により取得したものとみなされるものには、所得税は課されません(所得税法9条1項17号)。中小機構も、遺族が共済金を受け取る場合の税法上の取扱いを「(相続税法上)みなし相続財産」と案内しています。遺産の総額が基礎控除額を超えるかどうかは、この共済金のうち非課税枠を超える部分も含めて判定します(相続税の基礎控除の記事)。
請求の手続きと期限――必要書類、そして5年の時効
共済金は、遺族が請求してはじめて支給されます。中小機構の案内による手続きの流れは、次のとおりです。
- 添付書類を準備する戸籍謄本などをそろえます(下の表)。
- 請求書を入手し、記入する中小機構所定の共済金等請求書を使います。
- 金融機関で口座確認印を受ける振込先の口座について、金融機関の確認を受けます。
- 書類を提出する中小機構が案内する方法で提出します。
| 請求する人 | 主な添付書類(中小機構の案内) |
|---|---|
| 配偶者(第1順位) | 契約者の戸籍謄本または法定相続情報一覧図(死亡と続柄が確認できるもの)、請求者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内)、共済契約締結証書(紛失時は契約者番号が確認できる書類で代替可)、請求者のマイナンバー確認書類・本人確認書類 |
| 内縁の配偶者 | 上記に加え、契約者が成人してから死亡までの戸籍、内縁の方の戸籍謄本、両者の住民票、事実上婚姻関係と同様の事情にあったことを証する書類(健康保険の被保険者証の写し、遺族年金の証書の写し、喪主として記載のある会葬礼状など) |
| 第8〜第14順位の人 | 契約者の成人から死亡までの戸籍など、先順位の受給権者がいないことと、同順位の受給権者を確定できるもの |
必要書類は、請求する人の順位や事情によって変わります。亡くなった方の立場(個人事業主・共同経営者・会社等役員)によって案内のページも分かれており、中小機構のウェブサイトでは、請求者と請求事由を選ぶと必要書類が表示されます。戸籍の収集と法定相続情報一覧図の記事もあわせてご覧ください。
共済金を請求する権利は、5年で時効にかかります
共済金等の支給を受ける権利は、これを行使することができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅します(小規模企業共済法23条1項)。先順位者や同順位者の生死・所在が不明で請求できない場合には、請求できることとなった日から6か月以内は時効が完成しないという規定もあります(同条2項)。ご家族が契約の存在を知らないまま年月が過ぎることがないよう、早めに確認することが大切です。
契約があるかどうかを確かめる手がかり
- 預金通帳の引落し掛金は口座振替で納めるのが一般的です。毎月(または半年・1年ごと)の同額の引落しが手がかりになります。
- 確定申告書の控え「小規模企業共済等掛金控除」の欄に金額が記載されていれば、小規模企業共済か、iDeCo(個人型確定拠出年金)などに加入していた可能性があります(確定拠出年金の死亡一時金の記事)。
- 共済契約締結証書や、中小機構からの通知掛金の払込証明書などの書類が残っていないかを確認します。
相続財産の調べ方全般は、相続財産の調べ方の記事で整理しています。
契約者貸付けが残っているとき、掛金の所得控除――お金と税金の後始末
契約者貸付けの残高は、共済金から差し引かれる
小規模企業共済には、納めた掛金の範囲内で事業資金などを借りられる契約者貸付けの制度があります。亡くなった時点で貸付けの残高がある場合、中小機構は、貸付金と利子で弁済を受けるべきものや、未納の掛金などを、支給する共済金から控除することができます(小規模企業共済法16条の2)。
つまり、遺族の手元に届く金額は、共済金の額から貸付残高などを差し引いた金額になることがあります。相続税の申告で、共済金と貸付残高をどのように計上するかは、税理士または税務署にご確認ください。
亡くなった年に払った掛金は、準確定申告で控除する
亡くなった方に確定申告が必要な場合、相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をします(準確定申告の記事)。亡くなった年に支払った掛金は、小規模企業共済等掛金控除として所得から差し引く対象になります(所得税法75条)。掛金の払込証明書を探しておきましょう。
前納していた掛金・未納の掛金
掛金を前納していた場合や、逆に未納があった場合の精算は、契約の状態によって異なります。未納の掛金は共済金から差し引かれることがあります(小規模企業共済法16条の2)。具体的な精算の内容は、請求の際に中小機構にご確認ください。
事業を継ぐ配偶者・子の「承継通算」――共済金を受け取らず、掛金納付月数を引き継ぐ
亡くなった個人事業主の事業を、配偶者または子が引き継ぐ場合には、共済金を受け取る代わりに、亡くなった方の掛金納付月数を引き継いで自分の共済契約とする方法があります。これを承継通算といいます(小規模企業共済法13条2項)。
| 要件・注意点 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる旧契約者 | 個人事業主または共同経営者。中小機構は、旧契約者が会社等役員の場合は利用できないと案内しています。 |
| 引き継ぐ人 | 旧契約者の配偶者または子で、事業の全部を一人で譲り受け、または相続により承継した人(共同経営者の場合は、その地位を相続した人) |
| 共済金との関係 | 旧契約の共済金等の全部の支給を受ける権利を持つ人が、共済金等を請求しないで、新たに共済契約を締結すること |
| 期限 | 相続開始の日(事由発生)から1年以内に申し出ること |
| 回数 | 配偶者または子に限り1回のみ。すでに承継通算をした契約を、さらに承継通算することはできません。 |
| 加入資格 | 引き継ぐ人自身が、小規模企業共済の加入資格を満たしていること |
共済金を受け取るか、承継通算をするか
承継通算ができるのは、旧契約の共済金等の全部の支給を受ける権利を持つ人です。配偶者がご健在で、子が事業を継ぐ場合は、共済金を受け取る権利は第1順位の配偶者にありますので、子が承継通算をするには、通算の申出をすることを条件として配偶者からその権利を譲り受ける手続き(同法15条ただし書)が関係します。具体的な進め方は中小機構にご確認ください。
承継通算をすると、亡くなった方が積み上げてきた納付月数を生かして、後継者が将来、より長い納付月数にもとづく共済金を受け取れる可能性があります。一方で、次の点に注意が必要です。
- 税金がかからないわけではない中小機構は、「承継通算は課税対象となります。詳細はお近くの税務署におたずねください」と案内しています。
- 将来の退職所得の計算で、旧契約者の期間は勤続年数に入らない中小機構によれば、後継者が将来共済金を受け取るときの退職所得控除の計算では、勤続年数の起算日は承継通算した日となり、旧契約者が掛金を払い込んだ期間は含まれません。
- 当面の生活資金・納税資金にはならない共済金を受け取らない選択ですので、相続税の納税や当面の資金が必要な場合は、受け取る方が適していることもあります。
どちらが有利かは、後継者の年齢、事業を続ける見込み、相続税の負担などによって変わります。期限が1年と限られていますので、事業を継ぐことが決まったら、早めに中小機構と税理士にご相談ください。事業の引継ぎ全体は、事業承継の基礎の記事で整理しています。
小規模企業共済の死亡時の手続きでよくある7つの落とし穴
- 「相続人で分けるもの」と思い込む 受け取る人は小規模企業共済法10条の遺族の順位で決まります。配偶者がいれば配偶者が受け取り、遺産分割協議の対象にはならないと考えられます。
- 契約の存在に気づかないまま、時効を迎える 共済金を請求する権利は5年で時効にかかります(同法23条1項)。通帳の引落しと確定申告書の控えを確認します。
- 会社役員の死亡でも「共済金A」だと思い込む 個人事業主・共同経営者の死亡は共済金A、会社等役員の死亡は共済金Bです。金額の見込みが変わります。
- 非課税枠を、死亡退職金と別々に使えると思い込む 共済金と会社からの死亡退職金は、合計して一つの枠(500万円×法定相続人の数)です。生命保険金の枠とは別です。
- 相続放棄をした人・内縁の配偶者にも非課税枠があると思い込む 非課税の対象は相続人が取得した退職手当金等です(相続税法12条1項7号)。相続人以外の人が受け取った場合は、全額が課税の対象になります。
- 契約者貸付けの残高を見落とす 貸付残高や未納掛金は、共済金から差し引かれることがあります(小規模企業共済法16条の2)。受け取れる金額を早めに確認します。
- 承継通算の「1年以内」を過ぎてしまう 事業を継ぐ配偶者・子の承継通算は、相続開始から1年以内の申出が必要です(同法13条2項)。共済金を請求してしまうと、承継通算は選べません。
「共済金も子どもたちと分けるものだと思っていました」――Kさまのご相談
Kさま(60代)は、個人で内装業を営んでいたご主人を亡くされました。相続人はKさまと、独立しているお子さま2人です。遺品を整理していると、小規模企業共済の共済契約締結証書と、掛金の払込証明書が出てきました。ご主人は30年近く掛金を納めていたようです。Kさまは「預金と同じように、子どもたちと話し合って分けるものだと思っていました。それに、事業用の借入れの返済に使ってしまってよいのかも分かりません」とお話しになりました。
私からは、「小規模企業共済の共済金は、法律が定める順位の遺族に支給されるもので、配偶者がいらっしゃる場合は配偶者が第1順位です。遺産分割協議で分ける財産とは別に考えるのが一般的です。ただし、相続税の計算では退職手当金等として扱われ、相続人が受け取った分には500万円に法定相続人の数を掛けた非課税枠があります。契約者貸付けの残高があれば差し引かれますので、まず中小機構に契約の状態と受け取れる金額を確認しましょう。請求には5年の時効があります」とお伝えしました。
Kさまは中小機構に確認したうえで、戸籍謄本や印鑑登録証明書をそろえて共済金を請求し、相続税の申告については税理士に依頼されました。事業はお子さまが継がないことになったため、承継通算ではなく共済金を受け取る方法を選ばれています。Kさまは「主人が『自分の退職金代わりだ』と言っていた意味が、ようやく分かりました。証書が見つかってよかったです」とおっしゃっていました。
「誰が受け取るか」を、元気なうちにご家族と共有してください
小規模企業共済は、長年事業を続けてこられた方が、ご自身とご家族のために積み立ててきた大切な備えです。ところが、ご家族が契約の存在を知らない、あるいは相続人で分けるものだと誤解しているというご相談は、決して少なくありません。
共済金を受け取る人は法律の順位で決まり、遺言で変えることはできないと考えられます。再婚されている方、内縁のパートナーがいらっしゃる方、お子さまが事業を継ぐ予定の方は、ご自身の場合に誰が受け取ることになるのかを一度確認し、共済契約締結証書の保管場所とあわせて、ご家族に伝えておかれることをおすすめします。
私たちは、ご事情を伺いながら論点を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家におつなぎしております。どうぞお気軽にご相談ください。
この記事のまとめ
- 小規模企業共済の契約者が亡くなると、掛金納付月数が6か月以上あれば、遺族に共済金が支給されます(小規模企業共済法9条1項)。個人事業主・共同経営者の死亡は共済金A、会社等役員の死亡は共済金Bです。
- 受け取る人は、民法の相続人ではなく、小規模企業共済法10条の遺族の順位で決まります。第1順位は配偶者(内縁を含む)で、次に生計を維持されていた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹と続きます。
- 契約者の死亡による共済金は、一般に遺産分割の対象にならないと考えられます。分割受取りの途中で亡くなった場合の残額は、相続人に支給されます(同法9条の4)。
- 相続税では退職手当金等としてみなし相続財産となり(相続税法3条1項2号、同法施行令1条の3第10号)、相続人が取得した分は500万円×法定相続人の数まで非課税です(相続税法12条1項7号)。会社からの死亡退職金とは合算します。
- 共済金を請求する権利は5年で時効にかかります(小規模企業共済法23条1項)。契約者貸付けの残高は共済金から差し引かれることがあります(同法16条の2)。
- 事業を継ぐ配偶者・子は、1年以内の申出で承継通算を選べます(同法13条2項)。最新の情報は中小機構・国税庁でご確認ください。
参考文献(一次情報)
- e-Gov法令検索 小規模企業共済法(第2条・第4条・第9条・第9条の4・第10条・第11条・第13条・第15条・第16条の2・第23条・第30条) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000102
- e-Gov法令検索 相続税法(第3条・第12条・第18条) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000073
- e-Gov法令検索 相続税法施行令(第1条の3) https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000071
- e-Gov法令検索 所得税法(第9条・第75条) https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 中小機構 小規模企業共済 共済金等請求・解約(請求事由、共済金等の額、税法上の取扱い、受給権者の範囲および順位) https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/claim/index.html
- 中小機構 小規模企業共済 契約者の死亡(会社等役員) https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/claim/describe/index_45.html
- 中小機構 小規模企業共済 掛金納付月数の通算(承継通算) https://kyosai-web.smrj.go.jp/customer/skyosai/registration/index_04.html
- 国税庁 タックスアンサー No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4117.htm
事業をされていた方の相続、まずはご相談ください
「共済に入っていたようだが、誰が受け取るのか分からない」「事業用の借入れが残っている」「子どもが事業を継ぐかどうか迷っている」――ご家族だけで抱え込まず、状況を伺いながら一緒に整理しませんか。
ご事情にあわせて論点を整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などの専門家におつなぎいたします。