遺言事項とは――遺言で法的な効力が生じることは、法律で決まっています

遺言は、遺言をした方が亡くなった時から、その効力を生じます(民法985条1項)。契約と違って相手方の承諾を必要とせず、遺言者ひとりの意思で、財産の行き先や家族の法律関係を変えることができます。

それだけ強い効果をもつものですので、民法は2つの歯止めを置いています。

  1. 方式が決まっています遺言は、民法に定める方式に従わなければ、することができません(民法960条)。
  2. 内容にも範囲があります遺言によって法的な効力が生じるのは、民法その他の法律が「遺言ですることができる」と定めている事項に限られる、と考えられています。

2つ目の、法律が定めている事項のことを、遺言事項または法定遺言事項と呼びます。「遺言事項」という言葉そのものは条文にはなく、個々の条文に散らばっている規定をまとめて呼ぶ言い方です。

分類主な内容この記事の章
財産に関する事項相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈、特別受益の持戻しの免除 など第2章・第3章
身分に関する事項認知、未成年後見人の指定、推定相続人の廃除 など第4章
遺言の執行などに関する事項遺言執行者の指定、祭祀主宰者の指定、信託、保険金受取人の変更 など第5章

遺言事項に当たらないことを遺言書に書いても、遺言書全体が無効になるわけではありません。その部分は、ご家族へのお願いやお気持ちを伝える付言事項として扱われ、法的な拘束力は生じない、というのが基本的な考え方です。

[遺言の方式は、改正が予定されています]
遺言の方式については、令和8年(2026年)6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により見直しが行われており、施行の時期は改正の内容ごとに異なります。本記事が扱うのは、方式ではなく、遺言に書くことができる内容です。方式についての最新の情報は、法務省でご確認ください。

財産の分け方に関する遺言事項――相続分の指定・分割方法の指定・遺贈

遺言のもっとも中心的な役割は、財産をだれに、どのように引き継ぐかを決めることです。民法は、そのための方法をいくつか用意しています。

遺言事項内容条文
相続分の指定法定相続分と異なる割合を、遺言で定めることができます。定めることを第三者に委託することもできます。民法902条1項
遺産分割方法の指定「自宅は妻に、預金は長男に」のように、分け方を遺言で定めることができます。第三者に委託することもできます。民法908条1項
遺産分割の禁止相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁じることができます。民法908条1項
遺贈包括または特定の名義で、財産の全部または一部を処分することができます。相続人以外の方や法人にも遺すことができます。民法964条
配偶者居住権の遺贈配偶者が、亡くなった方の建物に相続開始の時に住んでいた場合に、配偶者居住権を遺贈の目的とすることができます。民法1028条1項2号

「相続させる」と書いた遺言――特定財産承継遺言

遺産分割方法の指定として、遺産に属する特定の財産を、共同相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言を、民法は特定財産承継遺言と呼んでいます(民法1014条2項)。「自宅の土地建物を長男に相続させる」という書き方が、その典型です。遺贈との違いは、「相続させる」と「遺贈する」の違いの記事で整理しています。

それぞれの詳しい内容

分け方を調整する遺言事項――持戻しの免除・遺留分の負担・担保責任

財産の行き先を決める事項のほかに、相続人のあいだの調整に関する事項も、遺言で定めることができます。

特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)

相続人のなかに、遺贈を受ける方や、婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として生前に贈与を受けた方がいるときは、その贈与の価額を相続財産に加えたうえで相続分を計算し、そこから遺贈・贈与の価額を差し引くのが原則です(民法903条1項)。これを一般に「持戻し」といいます。被相続人がこれと異なる意思を表示したときは、その意思に従います(同条3項)。「長女への住宅資金の贈与は、相続分の計算に含めない」といった意思表示です。

この意思表示は、遺言に限られておらず、生前にすることもできます。ただ、あとで争いにならないよう、遺言など書面に残しておくことが大切です。なお、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が、他方に居住用の建物や敷地を遺贈・贈与したときは、持戻しをしない意思を表示したものと推定されます(同条4項)。特別受益については、特別受益と寄与分の記事をご覧ください。

遺留分侵害額の負担についての別段の意思(民法1047条1項2号ただし書)

遺留分を侵害された相続人から請求を受けたとき、受遺者が複数いる場合には、遺贈の目的の価額の割合に応じて負担するのが原則です。ただし、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います(民法1047条1項2号)。たとえば、「遺留分侵害額の請求があったときは、まず長男が受ける遺贈から負担する」と定めておくことが考えられます。

共同相続人のあいだの担保責任の定め(民法914条)

遺産分割で受け取った財産に不足や欠陥があった場合、各共同相続人は、他の共同相続人に対して、相続分に応じて担保の責任を負います(民法911条)。被相続人は、遺言で、これと異なる定めをすることができます(民法914条)。

遺贈の細かい条件についての別段の意思

このほか、遺贈に関する条文には、「遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」と定めるものが数多くあります。受遺者が先に亡くなった場合に備える定めは、その代表例です(予備的遺言の記事)。

遺留分そのものを、遺言でなくすことはできません

遺言で定めることができるのは、遺留分侵害額をだれが先に負担するかという順序や割合です。兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があり(民法1042条)、遺留分を侵害された方は、侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます(民法1046条1項)。「遺留分の請求を禁じる」と遺言に書いても、請求する権利を失わせることはできません。遺留分については、遺留分の記事をご覧ください。

身分に関する遺言事項――認知・未成年後見人の指定・推定相続人の廃除

遺言では、財産のことだけでなく、家族の法律関係(身分関係)についても、一定の事項を定めることができます。

遺言事項内容条文
認知婚姻関係にない相手とのあいだに生まれた子を、自分の子として認めることです。遺言によってもすることができます。民法781条2項
未成年後見人の指定未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができます(管理権を有しない者を除きます)。民法839条1項
未成年後見監督人の指定未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができます。民法848条
推定相続人の廃除遺言で廃除の意思を表示することができます。遺言執行者が、家庭裁判所に廃除を請求します。民法893条
廃除の取消しすでにした廃除を取り消す意思も、遺言で表示することができます。民法894条2項

認知――遺言執行者が届け出ます

遺言による認知の場合、遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添えて、届出をしなければなりません(戸籍法64条)。認知された子は相続人になりますので、ほかの相続人の相続分にも影響します。くわしくは、婚外子・認知された子の相続権の記事をご覧ください。

未成年後見人の指定――ひとり親の方に知っていただきたい事項

親権者が1人しかいない場合、その方が亡くなると、お子さまには親権を行う人がいなくなります。遺言で未成年後見人を指定しておくと、ご自身が信頼する方に、お子さまの監護と財産の管理を託すことができます。くわしくは、遺言で未成年後見人を指定する記事をご覧ください。

廃除――書けば認められる、というものではありません

廃除の対象になるのは、遺留分を有する推定相続人です。その方が被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えたとき、または著しい非行があったときに、家庭裁判所に請求することができます(民法892条)。遺言に廃除の意思を書いた場合も、遺言執行者が家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が認めてはじめて効力が生じます。認められた場合は、被相続人の死亡の時にさかのぼって効力を生じます(民法893条)。

遺留分のない兄弟姉妹は、廃除の対象ではありません。兄弟姉妹に財産を遺したくない場合は、遺言でほかの方に財産を遺すことで対応することになります。廃除の要件については、相続欠格と廃除の記事をご覧ください。

[婚姻・離婚・養子縁組は、遺言ではできません]
婚姻、離婚、養子縁組、離縁は、当事者の合意と届出などによって成立するものです。「私が亡くなったら、○○を養子とする」と遺言に書いても、養子縁組の効力は生じません。孫やお世話になった方に財産を遺したい場合は、生前に養子縁組をするか、遺贈をすることを検討します(養子縁組と相続の記事)。

遺言の執行・祭祀・そのほかの法律が定める遺言事項

遺言執行者の指定(民法1006条1項)

遺言者は、遺言で、1人または数人の遺言執行者を指定し、またはその指定を第三者に委託することができます。遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項)。役割と選び方は、遺言執行者の記事で説明しています。

祭祀を主宰すべき者の指定(民法897条1項ただし書)

系譜、祭具、墳墓(お墓)の所有権は、相続財産とは別に、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。被相続人の指定があるときは、その指定された方が承継します。この指定は、方法が限られておらず、生前に口頭や書面で行うこともできますが、遺言に書いておくと、ご意思がはっきり残ります。くわしくは、祭祀財産の承継の記事をご覧ください。

遺言の撤回(民法1022条)

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができます。前の遺言を取り消す、という内容そのものも、遺言で定めることができる事項です(遺言書の撤回・書き直しの記事)。

民法以外の法律が定める遺言事項

遺言事項内容条文
信託の設定特定の者に対し財産の処分をする旨と、その者が一定の目的に従い財産の管理・処分などをすべき旨の遺言をする方法により、信託をすることができます。信託法3条2号
一般財団法人の設立遺言で、定款に記載すべき事項を定めて、一般財団法人を設立する意思を表示することができます。遺言執行者が定款を作成します。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項
保険金受取人の変更生命保険契約などの保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができます。保険法44条1項・73条1項

信託法上の「遺言による信託」は、信託銀行などが提供している「遺言信託」という名称のサービスとは別のものです。この点は、信託銀行の「遺言信託」の記事で説明しています。

保険金受取人の変更は、保険会社への通知が欠かせません

遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じたあと、保険契約者の相続人がその旨を保険者(保険会社)に通知しなければ、保険者に対抗することができません(保険法44条2項・73条2項)。通知の前に、保険会社がもとの受取人に保険金を支払ってしまうおそれがあります。また、死亡保険契約の受取人の変更は、被保険者の同意がなければ効力を生じません(保険法45条)。保険法の規定は、原則として施行日(平成22年4月1日)以後に結ばれた契約に適用されます(保険法附則2条)。それより前の契約では取扱いが異なる場合がありますので、可能であれば、生前に保険会社で変更の手続きをしておくほうが確実です。受取人の見直しについては、生命保険の受取人の記事をご覧ください。

「遺言でしかできないこと」と「生前でもできること」

遺言事項のなかには、遺言でなければすることができないものと、生前に別の方法ですることもできるものがあります。条文の定め方をもとに整理すると、おおむね次のとおりです。

区分事項
遺言によってする事項相続分の指定(民法902条)/遺産分割方法の指定・遺産分割の禁止(908条1項)/遺贈(964条)/共同相続人の担保責任の定め(914条)/遺留分侵害額の負担についての別段の意思(1047条1項2号ただし書)/未成年後見人・未成年後見監督人の指定(839条・848条)/遺言執行者の指定(1006条1項)
生前にすることも、遺言ですることもできる事項認知(781条)/推定相続人の廃除とその取消し(892条〜894条)/特別受益の持戻しの免除(903条3項)/祭祀主宰者の指定(897条1項ただし書)/信託(信託法3条)/一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条)/保険金受取人の変更(保険法43条・44条)

生前にできることは、生前にしておくほうが確実な場合があります

生前にも遺言でもできる事項は、どちらを選ぶかを考える必要があります。

一方で、ご事情によって、生前には明らかにしにくいこともあります。どちらの方法がご自身の状況に合うかは、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。

遺言執行者が必要になる事項と、書いても法的な効力が生じないこと

遺言執行者がいないと実現できない事項

遺言事項のなかには、法律が、遺言執行者による手続きを予定しているものがあります。

事項遺言執行者の役割条文
認知就職の日から10日以内に、認知の届出をします。戸籍法64条
推定相続人の廃除・その取消し遺言が効力を生じたあと、遅滞なく、家庭裁判所に請求します。民法893条・894条2項
一般財団法人の設立遺言で定めた事項を記載した定款を作成します。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項

これらの事項を遺言に書いたのに遺言執行者の指定がない場合は、利害関係人が家庭裁判所に請求して、遺言執行者を選任してもらうことになります(民法1010条)。手続きに時間がかかりますので、これらの事項を書くときは、遺言執行者もあわせて指定しておくことをおすすめします。

また、遺贈については、遺言執行者がある場合には、その履行は遺言執行者のみが行うことができます(民法1012条2項)。相続人以外の方への遺贈や、不動産を売却して代金を分ける内容の遺言では、遺言執行者を指定しておくと手続きが進めやすくなります。

書いても法的な効力が生じないこと(付言事項)

次のような内容は、法律に遺言事項としての定めがなく、遺言書に書いても、相続人を法的に拘束する効力は生じないと考えられています。

書きたいこと扱い実現するための方法の例
葬儀・納骨の方法の希望希望として尊重されることはありますが、法的な拘束力はありません。エンディングノート、死後事務委任契約(死後事務委任契約の記事)
「兄弟仲良く」「母を大切に」お気持ちを伝える付言事項です。付言事項として遺言書に書く
「長男は母の面倒をみること」単に書いただけでは、義務は生じません。財産を遺す条件とする負担付遺贈(負担付遺贈の記事)
「自宅は売らずに守ってほしい」相続した方の処分を将来にわたって禁じる効力は、一般に生じないと考えられています。信託の利用を検討する
「借金は長男が全部払うこと」相続人のあいだの取り決めとしては意味をもちますが、債権者には、原則として主張できません。次の項目をご覧ください
臓器提供・献体の希望遺言事項ではありません。意思表示カードや登録(献体と臓器提供の記事)

債務の負担を遺言で決めた場合

遺言で相続分の指定がされた場合であっても、被相続人の債権者は、各共同相続人に対して、法定相続分に応じて権利を行使することができます。ただし、債権者が、指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りではありません(民法902条の2)。遺言で「借入金は長男が負担する」と定めても、金融機関などの債権者は、ほかの相続人に法定相続分に応じた支払いを求めることができる、ということです。事業用の借入れがある場合は、生前に金融機関と相談しておくことが大切です(借金・保証債務の相続の記事)。

付言事項には法的な効力はありませんが、遺言の理由やご家族への感謝を書いておくことで、遺言の内容が受け入れられやすくなることがあります。書き方は、遺言書の付言事項の記事で紹介しています。

遺言事項でよくある7つの落とし穴

  1. 遺言書に書けば、どのような内容でも相続人を拘束できると考える 法的な効力が生じるのは、法律が定める遺言事項に限られると考えられています。それ以外は、付言事項として扱われます。
  2. 認知や廃除を書いたのに、遺言執行者を指定していない 認知の届出(戸籍法64条)や廃除の請求(民法893条)は、遺言執行者が行います。指定がないと、家庭裁判所での選任の手続きが必要になります。
  3. 「廃除する」と書けば、その相続人は相続できなくなると考える 廃除は、家庭裁判所が認めてはじめて効力が生じます。虐待・重大な侮辱・著しい非行という要件を裏付ける資料が必要です。
  4. 保険金の受取人の変更を遺言に書いて、だれにも知らせていない 相続人が保険会社に通知しなければ、保険会社に対抗できません(保険法44条2項)。生前の変更手続きのほうが確実です。
  5. 遺言で、遺留分の請求を封じることができると考える 遺言で定められるのは、侵害額を負担する順序や割合です。遺留分そのものを遺言でなくすことはできません。
  6. 借金を負担する相続人を決めておけば、ほかの相続人は請求されないと考える 債権者は、原則として、各相続人に法定相続分に応じて請求することができます(民法902条の2)。
  7. 葬儀や納骨の希望を、遺言書だけに書いておく 遺言書が開かれるのは、葬儀が終わったあとになることが少なくありません。葬儀の希望は、ご家族に直接伝える・エンディングノートに書くなど、すぐに見てもらえる方法で残しておきます(エンディングノートの記事)。
ご相談事例
※以下は、実際のご相談を参考に構成した架空の事例です。特定の個人・団体とは関係ありません。

「書きたいことを全部書いたら、便せん5枚になりました」――Mさまのご相談

Mさま(70代)は、ご自身で遺言書の下書きを作り、相談にお見えになりました。下書きには、「葬儀は家族だけで行うこと」「長男は妻の面倒を最後までみること」「生命保険の受取人は妻から長女に変える」「自宅は長男に相続させる。ただし売ってはならない」「兄弟は仲良くすること」といった内容が、便せん5枚にわたって書かれていました。Mさまは「思いつくことを全部書きました。これで子どもたちは、このとおりにしてくれますよね」とお話しになりました。

私からは、「お気持ちがよく伝わる下書きです。ただ、遺言で法的な効力が生じることは、法律で決まっています。自宅を長男さまに相続させる、という部分は効力が生じます。一方、葬儀の方法や、奥さまの面倒をみること、兄弟仲良く、という部分は、お願いとして伝わりますが、法的に義務づけることはできません。奥さまの生活を確実に守りたいのであれば、配偶者居住権を遺す方法や、財産を遺す条件にする方法もあります。保険金の受取人は、遺言でも変更できますが、保険会社への通知が必要になりますので、お元気なうちに保険会社で手続きをなさるほうが確実です。葬儀のご希望は、遺言書とは別に、ご家族に直接お伝えになるか、エンディングノートに書いておかれることをおすすめします」とお伝えしました。

Mさまは、内容を「遺言で決めること」「生前に手続きをすること」「家族に伝えておくこと」の3つに分け直されました。保険金の受取人は保険会社で変更の手続きをし、遺言は司法書士に相談のうえ、公正証書で作成されたそうです。ご家族への思いは、付言事項としてまとめられました。Mさまは「全部を遺言書に書けばよいと思っていました。分けて考えたら、かえってすっきりしました」とおっしゃっていました。

― 私たちから一言 ―

「遺言に書くこと」と「別の方法で残すこと」を分けて考えます

遺言書を書こうとなさる方の多くは、財産のこと、ご家族のこと、ご自身の最期のことを、ひとつの書面にまとめたいとお考えになります。そのお気持ちは、とても自然なものです。

ただ、遺言で法的な効力が生じる事項は、法律で定められています。効力が生じない事項を書いたことで遺言が無効になるわけではありませんが、「書いたのだから実現されるはずだ」という思い込みが、あとでご家族の負担になることがあります。保険金の受取人のように、生前に手続きをしたほうが確実な事項もあります。

私たちは、お書きになりたい内容を伺いながら、遺言で定めること、生前に手続きをすること、エンディングノートや契約で残すことを一緒に整理し、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士・公証役場におつなぎしております。どうぞお気軽にご相談ください。

一般社団法人相続なんでも相談センター 代表理事 宮野 宏樹

この記事のまとめ

  • 遺言で法的な効力が生じるのは、民法その他の法律が定める遺言事項(法定遺言事項)に限られると考えられています。それ以外は、付言事項として扱われます。
  • 財産に関する事項には、相続分の指定(民法902条)、遺産分割方法の指定・分割の禁止(908条1項)、遺贈(964条)、特別受益の持戻しの免除(903条3項)などがあります。
  • 身分に関する事項には、認知(781条2項)、未成年後見人の指定(839条)、推定相続人の廃除(893条)などがあります。廃除は、家庭裁判所が認めてはじめて効力が生じます。
  • 遺言執行者の指定(1006条1項)、祭祀主宰者の指定(897条1項ただし書)、信託(信託法3条2号)、保険金受取人の変更(保険法44条)なども、遺言ですることができます。
  • 認知・廃除・一般財団法人の設立は、遺言執行者による手続きが予定されています。これらを書くときは、遺言執行者もあわせて指定します。
  • 葬儀の希望や家族へのお願いには、法的な拘束力は生じません。債務の負担の指定も、債権者には原則として主張できません(902条の2)。最新の情報は法務省等でご確認ください。

参考文献(一次情報)

※本記事は一般的な解説を目的としたものであり、個別の事情により取り扱いが異なる場合がございます。本記事は法律上・税務上の助言を提供するものではなく、個々の遺言の有効性や、遺言の内容が実現されることを保証するものではありません。遺言の条項がどのような効力をもつかは、遺言書の文言、作成の経緯、相続人や財産の状況などによって結論が異なります。遺言事項の分類は、条文の定めをもとに一般的な理解を整理したものであり、解釈が分かれる点もあります。制度は改正されることがありますので、最新の情報は法務省等でご確認のうえ、具体的な遺言の作成については、弁護士・司法書士・公証役場などの専門家にご相談ください。

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